新方式!オルタネータ改造自己励磁式自転車発電
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0.はじめに
オルタネータを用いた自転車発電では、初期励磁用に自転車のライト用ダイナモを一緒に回す方式が一般的です。
このたび新しい回路方式により『オルタネータを改造し残留磁気により自己励磁することで初期励磁用のダイナモを廃止』することに成功しましたのでご紹介します。
オルタネータを永久磁石界磁発電機のように、「単品で回すだけで発電」できるように改造します。
<ご注意>
このサイトを参考に改造を行い、火災や事故がおきましても筆者は一切責任を取ることはできません。必ず自己責任で実施してください。
ご紹介する方法はレギュレータの界磁制御がオープンコレクタになっていないタイプのオルタネータでは使用できません。(レギュレータが壊れます。)
●従来型の回路や台座の作り方については、オルタネータ自転車発電を発明された鈴木氏のページを参照ください。
自転車発電のページ (鈴木靖文 環境のページ内)
●オルタネータ・レギュレータについては、下記から「オルタネータの基礎(1/5)~(5/5)」を参照ください。
オルタネータの資料 - エアロバイクを人力発電機に改造したよ
自転車発電の作例を調べると、自動車用のオルタネータを用いたものが多く見つかります。
オルタネータは電磁石界磁であり、発電を開始するためにまず電磁石に電流を流してあげる必要があり、クルマではバッテリーが使われます。
自転車発電においては、バッテリーまたは永久磁石界磁である自転車ライト用ダイナモを用いる作例が多いです。
「初期励磁」と呼ばれる手順で、同期発電機の仕組みを知っていれば違和感はないですが、一般のお客様にはなぜライト用ダイナモが出てくるのか分かりづらいという問題があります。
大学生1年時にサークルで取り組んだ自転車発電一号機では、従来通りチャリのライト用ダイナモによる他励式で製作しました。
しかし、次のような課題がありました。
・安全上の課題:
後輪に取り付けたダイナモに足が引っかかる
→こちらは取付位置に気を付ければOKです
・動作原理が分かりづらい:
一般的にオルタネータよりもチャリのダイナモの方がなじみがある為、『チャリのライト用ダイナモが発電機じゃないの?ダイナモだけじゃ発電できないってどういうこと?』と質問いただくことが多い
ダイナモを取り去るだけならば、クルマのように鉛バッテリーを併用すればよいのですが、それこそお客様から見たら『なーんだ、バッテリー使ってるじゃん』ということになります。
時は流れ再びイベントで自転車発電をやる機会をいただき、2号機ではどうしてもバッテリーを使わずダイナモを取り去りオルタネータ単品で自励化したかったわけです。
オルタネータの内部構造例を示します。
オルタネータは回転界磁形同期発電機の仲間です。
回転子が電磁石になっており、固定子から発電した交流を取出し、内蔵されたダイオードブリッジ整流回路で直流に変換して出力する構造になっています。
電圧を制御するICレギュレータが内蔵され、レギュレータは出力電圧を監視して回転子の電磁石に流す電流を制御することで、出力電圧が一定になるように調整しています。
回転子の電磁石には鉄心が使われています。
鉄のような強磁性体には磁場をかけて磁化されると、磁場をゼロにしても磁束密度が残るという性質があります(残留磁気)。
参考文献:図2 B-H曲線(磁気ヒステリシス曲線) - 国立研究開発法人 科学技術振興機構 2024/10/26 閲覧
原理としては小学生の頃に教室のクリップ入れに磁石を放り込んで大量に釣り上げ、磁石を取り除いた後に磁化されたクリップ同士がくっついて残っている数を競ったのと同じになります。
回転子の鉄心も例外ではなく、前回運転時の電磁石による界磁により、鉄心に残留磁気が残ります。
オルタネータを励磁せずに回転させると、回転子に残っている残留磁気により固定子に電圧が生じます(残留電圧)。
一例として、手元のMC系ワゴンR用オルタネータ(31400-58J1)で残留電圧を実測した結果を示します。
残留磁気は状況によりますから参考値です。
自転車の速度換算は、自転車のタイヤとプーリーの滑りやタイヤの変形を無視して、プーリー直径から求めたおおよその値です。
残留電圧はごくわずかな電圧であり、オルタネータを無改造で回すだけでは発電開始できません。
ICレギュレータを起動させるほどの電圧を発生させることは困難であり、ICレギュレータ内のトランジスタによる電子スイッチをONすることができず、残留電圧を回転子の電磁石に印加することができないためです。
上図は固定子の電圧を交流電圧計で測定したものです。
直流に変換すると、さらに整流ダイオードの順方向電圧降下 Vf が差し引かれます。
自転車で回すのでは、とてもICレギュレータの電子回路を起動できるだけの電圧を出力できる回転数(20,000rpmくらいになると推定)で回すことはできません。
そこで、始動時だけICレギュレータ内の電子スイッチをバイパスして、わずかな残留電圧でも回転子の電磁石に励磁電流を流せるように改造し、わずかな残留電圧を活用してオルタネータを起動できるようにします。
ICレギュレータ内の電子スイッチをバイパスするリレーを取り付け、残留電圧の整流にはオルタネータ内蔵整流回路のみを使用するシンプルな回路です。
整流回路の Vf 損失が大きいため頑張って漕がないと起動しません。
使用するオルタネータの径やタイヤとの接触状況にもよりますが、31400-58J1で、時速換算で30km/h程度で漕がないと起動しませんでした。
大人の筋トレ用ならこの回路が使用できるかと思います。
レギュレータのバイパスと負荷切り離し
ICレギュレータ内部の電子スイッチはNPNトランジスタのオープンコレクタ回路になっていますから、 ブラシのレギュータ側端子をGNDに接続することでバイパスができます。(オープンコレクタのコレクタ・エミッタ間バイパス)
停止状態では、リレーがNC(ノーマリークローズ)側、ブレーク接点に接続されており、残留電圧は回転子の電磁石に印加されます。
負荷については、リレーのNO(ノーマリーオープン)端子、メーク接点を用いて切り離しています。
わずかな残留電圧が負荷に吸われてしまわないよう、起動時は負荷を切り離しておくことが重要です。
起動
オルタネータを回し始めると、回転子の残留磁気により固定子に残留電圧が発生します。
残留電圧はダイオード整流回路で直流に変換してから使用しますから、前提として、オルタネータ内蔵整流ダイオードの順方向電圧降下 Vf を上回る残留電圧を発生させられる回転数で回す必要があります。
整流ダイオードの Vf を上回ればダイオードがONし残留電圧を直流として取り出すことができ、界磁コイル(回転子の電磁石)に残留電圧が印加され電磁石が励磁されます。
すると回転子の磁束密度が強まり、固定子に発生する誘導起電力は上昇、界磁コイルに流れる電流がさらに増加し回転子の励磁が強くなり、固定子に発生する誘導起電力も上昇・・・という正帰還ループに入り、オルタネータが起動します。
レギュレータバイパス解除→通常動作
レギュレータICが動作可能な電圧まで出力電圧が立ち上がったら、リレーが動作し、レギュレータICのバイパスを解除します。
リレー切り替わり移行、界磁コイルの制御はレギュレータによる定電圧制御に引き継がれます。
オルタネータ単品で動作させた場合と全く同様になり、定格出力まで立ち上がった(電圧確立)あとは体力が続く限り内蔵レギュレータにより出力が14.5V程度に維持されます。
なお上記の回路ではリレーのNO(ノーマリーオープン)端子、メーク接点を生かして、出力電圧が立ち上がってから負荷をONする動作も一つのリレーで同時に行っています。
閾値電圧の調整
リレーの切り替えポイントなる閾値電圧は、使用するリレーとコイルに直列に入れる電流制限抵抗で定まります。
コンデンサは閾値付近でリレーが激しくON/OFFを繰り返し(発生するとブザーのような音がします)て暴れないための平滑用に必要で、低速回転時でも十分に平滑が行える値に調整します。
閾値電圧は、低すぎるとレギュレータICが動作せず、高すぎるとオルタネータや負荷が壊れますから、適切に調整する必要があります。
電圧を測りながらゆっくりと加速して、下記のように調整していきます。
レギュレータIC動作可能電圧(9V程度目安) < 閾値電圧 < ICレギュレータ調整電圧より低め(12V程度目安)
リレーの動作点は漕いで測ってを繰り返しながら決めていきますが、手元の基板取り付け型ミニリレーの場合で 220Ω+470μF程度 が最適と感じました。
レギュレータ側の配線例
レギュレータをバイパスするための配線は、下図のようにブラシのネジにケーブルを取り付けて配線します。(31400-58J1 での配線例)
ICレギュレータICをバイパスするだけでなく、残留電圧を倍電圧整流することで効率よく活用し、お子様でも起動しやすいように改良したVer.です。
31400-58J1では、時速換算で15km/h程度あれば起動するようになりました。
お子様も多く来場するイベント用はこの回路がお勧めです。
この回路では固定子の三相巻電にも配線を施します。
追加のダイオードは、普通のシリコンダイオードでも使用できますが、Vfが小さなショットキーバリアダイオード(SBD)を使うとより効率的に整流ができ、低い回転数で起動ができるようになります。
「あれ?倍電圧整流なのにダイオードが1つ?」となると思いますが、下図のように内蔵レクチファイアのダイオードのうち1本を相手として使っています。
赤いルート(1)の半サイクルで、追加ダイオード経由で発電電圧を使って追加回路の電解コンデンサを充電します。
次に青いルート(2)の半サイクルで、内蔵レクチファイアのダイオード経由で追加回路の電解コンデンサの電圧と発電電圧が足された電圧が励磁コイルへ印加され、倍電圧整流動作となります。
(1)と(2)の動作を繰り返すことで徐々に電圧が上昇していき、電圧確立へ至ります。
本回路の動作や内部の動作波形など詳細については参考文献をご覧ください。
参考文献:「倍電圧整流を用いた同期発電機の新しい自己励磁法」,電気学会論文誌D(産業応用部門誌),Vol.136(2016),No.5,P375-376
リレー周りの動作
考え方は前章 3. 内蔵レクチファイアによるシンプルな自励回路 と同じです。
ICレギュレータが動作可能な電圧まで立ち上がったらICレギューレータによる通常制御へ引き継ぐ「初期励磁切替リレー」、
電圧が立ち上がるまでは負荷を切り離しておく「負荷接続リレー」
の2点です。
初期励磁切り替えリレーのメーク接点はGNDではなく倍電圧出力となる為、負荷接続リレーは別に設けたコイル定格24Vのリレーを使います。
励磁切り替えと負荷接続のポイントを別々に設定できるため、使用するオルタネータや体力に合わせて調整します。
初期励磁切替リレーはレギュレータ破壊防止のため早め(出力10V程度)に切り替えるように設定し、負荷接続は突入電流に負けて停止しないよう、ある程度加速した14V程度まで出力が立ち上がってから(=自転車発電が加速してから)切り替えるようにすると、負荷接続直後に止まってしまう可能性を下げられ使いやすくなります。
お子様向けに実施する場合は、負荷接続リレーにCR時定数を設けて接続を遅らせ、加速する時間を設けるという考えもあると思います。
突入電流に備えて回転数を上げておけば、車輪がフライホイールとして振る舞うため突入電流に対して電解コンデンサのように作用し足への負荷を低減し、また回転機のパワーは「トルク×回転数」で与えられるため高回転ならば突入電流で喰らう急ブレーキトルクも低回転に比べ小さくて済み、さらに元の回転数が高ければ急減速後も発電維持可能な回転数に収まる確率も高まります。
リレーを1つにまとめる
下図のように2接点リレーを用いると初期励磁切り替えと負荷接続回路を一つのリレーにまとめられシンプルになります。
しかし励磁切り替えと同時に負荷が接続されるため、抵抗値の調整が難しくなります。
切り替えポイントが低すぎると、回転数が遅いうちに切り替える、つまり車輪をフライホイールと見立てた時に蓄積されている運動エネルギーが小さいうちに負荷を接続すると、突入電流で発電機に大きな静止トルクがかかることで急減速し発電が停止してしまうことがあります。
逆に切り替えポイントが高すぎると、倍電圧整流によりレギュレータや負荷に過電圧がかかり、故障や発煙に至る可能性があります。
固定子の端子の見分け方
固定子はスター結線の3相巻き線となっており、中性点を含む4端子が出ています。
始動用の単相倍電圧自励回路は線間電圧を使用しますから、中性点を除く3端子のうち任意の2端子を選択します。
放熱穴から各端子に何本巻き線が接続されているか覗いて見分けることができ、4端子のうち1つだけ他の3倍の本数が接続されている端子が中性点(使用対象外の端子)となります。
電流容量の大きいオルタネータでは固定子のコイルが複数並列になっていることがあります。
例えば 31400-58J1 では、 2本・2本・6本・2本 の組み合わせとなっており、6本の端子が中性点であり対象外となります。
残りの2本の端子3個のうちから、組み立てやすい位置の2端子を選んで単相倍電圧自励回路を配線します。
リレーが2つになり抵抗の調整では難しい、ひとまとめにするとさらに調整が難しい単相倍電圧自己励磁回路向けに、出力リレー制御を電子制御化した回路です。
Ver. 1
2号機でのイベント及び冒頭の動画は本回路で制御を行いました。
制御切り替えが「自動」の場合、電圧確率をコンパレータが検出すると直ちにONとなります。「手動」の場合は、電圧確立検出後に出力ボタンを押すまでリレーはONとなりません。
「手動」は突入電流が大きな負荷を接続した際、十分に自転車を加速させたうえで電源を入れるという操作が可能になります。
回路の動作
コンパレータとディスクリート論理回路を組み合わせています。
2つの 2SC2120 が AND 回路を形成してリレーを駆動しています。
2SA1015 の論理反転回路で駆動されている上側の 2SC2120 は、自己保持回路付きの制御スイッチです。
コンパレータにより駆動され 2SC1815 とダーリントンになっている下側の 2SC2120 は、電圧が閾値を超えている場合のみ ON になるスイッチです。
●「手動」設定時
1 発電機が立ち上がり、コンパレータの閾値電圧を超えると、下側の 2SC2120 がONになります。
2 上側の 2SA1015・2SC2120 の回路はプルアップ・プルダウン抵抗により OFF で安定していますから、リレーに通電しません。
3 「出力」スイッチを押すと、2SA1015 が ON、上側の 2SC2120 も ON しリレーに通電します。
「出力」スイッチと直列に入っている1kΩは、後輪から細い線でハンドルまで出力スイッチを伸ばしてきたとき、配線被覆が傷ついて+B短絡しても発火しないための安全目的です。
4 上側の 2SC2120 のコレクタにつながっているダイオードが ON になり 上側の 2SA1015・2SC2120 の回路 は ON で安定します(自己保持回路)
5 「出力」スイッチから手を放しても ON が維持されます。
6 発電電圧がコンパレータの閾値電圧を下回ると、下側の 2SC2120 が OFF になり、リレーも OFF になります。
●「自動」設定時
1 発電機が立ち上がり、コンパレータの閾値電圧を超えると、下側の 2SC2120 がONになります。
2 上側の 2SA1015・2SC2120 の回路も ON になり、リレーに通電します。
3 発電電圧がコンパレータの閾値電圧を下回ると、下側の 2SC2120 が OFF になり、リレーも OFF になります。
Ver.1の課題とVer.2製作
Ver.1回路ですが、次のような課題があるためVer.2を製作することにしました。
手動モード使わない
手動モードを用意したものの、ほとんど使いませんでした。
当初「自動」を自分用、「手動」をイベント用として設け、子供の場合など、ある程度加速してから「手動」で通電をと思っていました。
しかし、イベントで実際使用すると想定通りいかず、確かに十分に加速してからONすると負荷の突入電流に負ける可能性は下がるのですが、結局体力より大きな負荷の場合は急ブレーキがかかって止まってしまうだけでした。
操作する工数もかかるため、結局数人目から「自動」しか使わなくなりました。
使わない手動モードのためにディスクリート論理回路用にトランジスタを沢山使用していますから、Ver2では廃止します。
部品選定不適切
Ver1では、2回路入りOPアンプの相方を使って同居させた回路のためにハイインピーダンスなCMOS OP AMP を選定していました。
OPアンプをコンパレータとして使用する時はNFBをかけずに使用します。
ヒステリシス付きコンパレータとしては出力インピーダンスが高いことは不適切ですから、使いやすい低出力インピーダンスのOPアンプに見直します。
閾値が固定
Ver1は固定抵抗で閾値を固定していました。
31400-58J1 にはC端子が付いており、C端子をアースに落とすと調整電圧を12.5Vに設定できます。
C端子の機能は、イベントではラジエーターファンなどの消費電力の大きいDCモーター負荷を接続した際、 "Easy モード" として使用できます。
閾値設定が固定抵抗ですと "Easy モード" 使用時に閾値を柔軟に調整できませんから可変にします。
ヒステリシス不適切
閾値ギリギリのところで不安定になり、リレーがブザーのように振動します。
部品の種類が多い
使用する抵抗値の種類が多く部品集めが大変です。
Ver2では、E12系列縛りとし、可能な限り同じ値の部品で構成するようにします。
OPアンプは2回路入り単電源OPアンプを使用しますからICの数としては1つです。
抵抗は1kΩと10kΩのみ、コンデンサは10µFと0.1μFのみとし部品の種類を削減しました。
リレー制御トランジスタを、電流制御素子であるバイポーラTrから電圧制御素子であるMOS-FETに変え、消費電流削減と回路の簡易化を図りました。
閾値電圧は、ヒステリシス幅は維持したまま、可変抵抗で調整ができるようにしています。
回路の動作
大きく分けると4ブロックに分かれおり、入力側から見ていきます。
●入力ブロック
R1,R2,D1,C1 が入力ブロックです。
まず、R1,R2による抵抗分圧回路で、入力電圧をOPアンプの入力可能電圧範囲内に変換しています。
ここでは R1 = R2 ですから、1/2倍されます。
C1はR1,R2とローパスフィルタを形成します。
オルタネータの出力にはリプルが含まれ、リプルを除去してあげないと閾値付近でリプルの影響で正しく判定できなくなる可能性があります。
交流を発電して整流していることによる整流リプル、オルタネータの品種によってはICレギューレータが界磁コイルを ON/OFF して制御することによるリプルも含まれます。
R1,R2についてテブナン等価回路で考えると 5kΩ と 10µF による CR型1次ローパスフィルタとなり、カットオフ周波数は約 3.2Hz となります。
D1 は、発電機が停止してOPアンプの電源電圧が低下した際、 IC 1/2 の入力端子にOPアンプの電源端子電圧を大幅に上回る電圧がかかることが無いよう、 C1 を放電するための保護ダイオードです。
●ヒステリシス付きコンパレータブロック
IC 1/2,D2,D3,R4,IC 2/2 がヒステリシス付きコンパレータを構成しています。
IC 1/2 はバッファ用のボルテージフォロワで、前段の入力ブロックがR1,R2によりハイインピーダンスになっていますから、IC 2/2 側の回路を狙い通り動作させるために低インピーダンスに変換しています。
IC 2/2 側がコンパレータです。
IC 2/2 の出力が LOW の時はダイオード D2 が順バイアスされ、 IC 1/2 出力電圧から ダイオードの順方向電圧降下 Vf を差し引いた電圧が IC 2/2 の +入力端子に入力されます。
IC 2/2 の出力が HIGH の時はダイオード D3 が順バイアスされ、 IC 1/2 出力電圧に Vf を足し合わせた電圧が IC 2/2 の +入力端子に入力されます。
LOW→HIGH になる時と HIGH→LOW になる時の閾値に 2Vf の差が生じ、ヒステリシス電圧 2Vf のヒステリシス付きコンパレータとなります。
ここで、D2,D3の前段が十分に低インピーダンスでないと、抵抗の電圧降下分がVfに足されてしまい、狙った通り動かなないためバッファを設けています。
シリコンPNダイオードのVfは約0.6Vですから、ヒステリシス電圧は約1.2Vとなります。
全体で見ると、入力ブロックで 1/2 倍していますから、オルタ+B端子電圧で見ればヒステリシス幅は 約2.4V になります。
ヒステリシス幅を Vf で作っていますから、基準電圧を変えてもヒステリシス幅を維持できます。
OPアンプICは、GNDレベル出力対応した、低出力インピーダンスな出力段構成となっている、2回路入り単電源OPアンプを使用します。
●基準電圧ブロック
R3,ZD1,C2,VR1,C3 がコンパレータの基準電圧を作るための回路です。
R3,ZD1,C2は教科書通りのツェナーダイオードを用いた安定化電源回路です。
+B電圧が変動してもほぼ一定の電圧を作ってくれます。
VR1は閾値電圧を設定するための可変抵抗、C3はノイズ除去して誤作動リスクを下げるためのコンデンサです。
●リレー制御ブロック
R5,R6,Tr1,D4,RELAY1がリレー制御ブロックです。
R5はTr1をOFFで安定させるためのプルダウン抵抗です。
R6はゲート抵抗で、IC 2/2 が LOW/HIGH 切り替えた際、Tr1 のゲート容量充放電により IC 2/2 に過渡的な過電流が流れないよう、ゲート電流を制限しています。
Tr1 はリレーを駆動するための MOS-FET で、リレーコイル電流より Id 定格が大きく、Vth が IC 2/2 の LOW 電圧より高く HIGH 電圧より低いパワーMOS-FETなら何でも良いです。
D4は、リレーをON→OFFした際の誘導起電力を逃がしてMOS-FETの破壊を防止するための還流ダイオードです。
リレーには、コイル定格12Vの、十分に接点容量のあるものを選定します。
電源がオルタネータですから基本的に自動車用を使うことになります。エーモンのクルマDIY用30Aリレーがハーネス付きで楽です。
自己責任の条件のもと本回路を製作、回路図の展示等も含め、イベントでの使用含めて自由に行っていただいて差し支えありません。
お問合せ:mailあっとmail.hmcircuit.jp
※フィルタではねられてしまうため、件名には「自転車発電」等のわかり易い単語を入れてください。