ドラレコ/Bluetoothレシーバ用
電源コントローラの製作

エンジン始動時にACCでペアリングしていたBluetoothレシーバーが切断されてしまう!
手動アイドリングストップやエンストするとドラレコが再起動して撮れていない時間が・・・
というお悩みに対処するための電源コントローラをご紹介します。

<ご注意>
・このサイトを参考にし、火災・故障等が発生しましても筆者は一切責任を取ることはできません。必ず自己責任で実施してください。

・紹介する回路は昇圧回路は持っておらず、全てのアクセサリー機器の動作を保証するものではありません。バッテリーが弱っていてスターター作動時の電圧低下が大きい場合や、動作可能最低電圧が高い機器(電圧監視機能を持っている機器を含む)へ接続した場合、スターター作動時時の電圧低下で誤動作や再起動する可能性があります。
回路をお試しになる場合、事前に使用する予定のアクセサリー機器を常時電源へ直結し、スターター作動時に問題が発生しないか確認されることをお勧めします。

1、はじめに

背景

Bluetoothレシーバ
ドライブレコーダの電源は、駐車監視をしない場合シガーソケットから取ることが多いと思います。
またオーディオのアナログAUX端子をBluetooth化する後付けレシーバも、シガーソケットへ差し込むタイプがほとんどです。
シガーソケットの電源は、"ACC(アクセサリー)電源"または"IG2(イグニッション)電源"から取られていますが、車種によりエンジン始動時にシガーソケットの電源が遮断される構造になっていることがあります。
私の旧型ジムニー(JB23 3型)も例外でなく、シガーソケットは"ACC電源"へ接続されていますがエンジン始動時に切れてしまいます。そのため、アイドリングストップやエンストによりエンジン始動する際にBluetoothレシーバやドライブレコーダの電源が一時的に遮断されます。
電源の遮断によりオーディオはスマホアプリ側がBluetooth切断を検出し再生が一時停止され、ドラレコは録画ファイルが細切れになってしまうのみならず一時的に録画されない時間が発生するという問題がありました。

特にBluetoothオーディオレシーバが問題で、一時停止されると「ナビアプリのバックグラウンドにある音楽アプリを呼び出して再生ボタンを押す」というスマホ操作が必要になります。出発前にACCでペアリングしてからエンジン始動した際に面倒であるのみならず、坂道発進等でエンストしてしまった場合次の赤信号までスマホを操作できずオーディオの一時停止を解除することができません。

そこでエンジン始動時も通電している"IG1電源"と"ACC電源"、"常時電源"を使ってエンジン始動時に電源が切れないようにする電源コントローラを製作しました。

コントローラの構成

実装基板
左側の小さいMOSFETがBluetoothレシーバ用のコントローラで、クルマに元々ついているシガーソケットへ接続して使っています。
右側の大きいMOSFETがドラレコ用の回路で、初回ACC時出力待機機能付きです。
どちらもの回路も、共通して"ACC電源"及び"IG1電源"でスイッチを制御するという構成を取っています。

例えば旧型ジムニー(JB23 3型)の場合、キーをSTARTにした際にシガーソケット・オーディオ・エアコンといった用途に使用される"ACC電源"及び"IG2電源"は遮断される制御が入っています。
スターターへ電流を集中させてエンジン始動性を向上させるための制御と思われます。
一方、イグニッションコイルやECUなどエンジン始動に必要な"IG1電源"はスターター作動時も通電しています。そもそもスイッチがない"常時電源"ももちろん通電しています。

※キー位置と電源の動作については参考、クルマの電源についてをご覧ください。

そこで、「"ACC電源"と"IG電源"を使って電子スイッチを制御してあげればエンジン始動中も通電 させられる」という作戦の登場です。

なお、紹介する回路ではスターター作動時の電圧降下の影響は排除できません。ですがBluetoothレシーバやドラレコなどのデジタル機器は内部のICに安定した電源を供給する必要があり、定電圧電源を持っていることが多いと思われます。
スマホ充電器としても使えるUSB電源が付属してくるタイプの機器ですとわかり易いですが、アクセサリー機器本体の動作電圧はバッテリ電圧より低い電圧(例えば5V)となっており、エンジン始動時のバッテリー電圧降下は定電圧電源が吸収してくれます。
また、定電圧電源を持っていないアクセサリー機器の場合でも、オートアイドリングストップ車などのスターター作動時に"ACC電源"が遮断されない車種も存在する以上、スターター作動時の電圧降下は想定して設計されているはずですので、そこまで気にする必要はないと思われます。

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2、ベーシック構成

ベーシック構成回路図
スターター作動時の"ACC電源"遮断に対策するベーシックな構成で、Bluetoothレシーバにおススメです。

"ACC電源"と"IG1電源"の論理和(OR)により、
・"ACC電源"のみ(キー位置ACC)
・"ACC電源"・"IG1電源"両方(キー位置ON)
・"IG1電源"のみ(キー位置START)
のいずれでも通電するようにしています。

3種類の回路を掲載しておりますが、動作は全て同じになります。
半導体スイッチ版(標準グレード)
数A程度までの中電流負荷用で、シガーソケットで使用するようなドラレコやBluetoothレシーバといった小形の機器に向いています。
ダイオードD1・D2でOR回路を構成しており、Tr1でスイッチ用MOS-FETを制御し、Tr2がスイッチの役割を果たし電源を制御しています。スイッチにMOS-FETを使用するため、電磁リレーに比べてコンパクトに作ることができます。
R1・R2とC1はローパスフィルタを構成しており、ノイズでの誤動作を防止しています。
R3はベース電流制限用抵抗、R4・R5はTr1・TR2を確実にOFFするためのプルダウン/プルアップ抵抗です。
R6とLEDはインジケータランプで、不要ならばなくても構いません。
電磁リレー版(上位グレード) 
半導体スイッチ版のスイッチ用MOS-FET Tr2を電磁リレーに置き換えたもので、10Aを超えるような大電流負荷用です。MOS-FETの発熱やオン抵抗での電圧降下が気になる場合はこちらの回路が向いています。

電磁リレーが場所を取る為、コンパクトに組むのは難しくなります。
リレーを駆動するため、スイッチを制御するためのトランジスタもMOS-FETに置き換えています。電流制御素子であるバイポーラトランジスタでもリレー駆動は可能ですが、コレクタ負荷がリレーコイルとなり、マージンを含めるとベース電流を十分に流す必要があり効率が悪化します。
MOS-FETは電圧制御素子でありゲート電流制限抵抗は不要な為、R3は取り払っています。
またMOS-FETで誘導性負荷を制御しますので、OFFへの移行時に発生する逆起電力によるMOS-FETの破壊を防止するための還流ダイオードDも忘れずに挿入します。
簡易版(下位グレード)
消費電流が数百mA程度までの小電流負荷用で、LED手元照明などの小電流機器や、電流がほとんど流れないアンプの電源制御端子への接続などに向いています。
整流用ダイオードによるOR回路とノイズ対策用電解コンデンサのみの構成で、"ACC電源"と"IG1電源"を直接使用します。
非常にシンプルですが、簡易版は大電流機器や動作可能最低電圧が高い機器には使用できません。 ダイオードの順方向電圧降下により0.7~0.9V程度電圧が低くなりますので、 動作可能最低電圧が高い機器の場合はスターター作動時の電圧低下で再起動する可能性が高まります。
また、 出力電流×順方向電圧降下 に相当する電力が損失となり、大電流機器を接続するとダイオードが発熱し危険です。

3、+α構成 初回ACC時出力待機機能付き

+α構成回路図
半導体スイッチ版のベーシック構成に+αの機能を追加した回路(動画でご紹介した回路)です。
ドラレコ向けの構成で、駐車場でオーディオ等を使用する場合や、出発前にナビの目的地設定をしている際に無駄な録画をしない機能を持たせています
IG1・ACC共にL(OFF)であるキーOFFの状態からのACCがH(ON)へ移行するだけでは通電せず、IG1またはMANUALがHになると通電開始します。その後はACCがLになるまではIG1・MANUALの状態に関わらず通電し続ける動作をします。

MANUALは拡張用端子で、押しボタンスイッチ等を接続し初回のACC状態でドラレコを手動で起動したい時(再生したい時など)に使用します。さらにACCがLでもMANUALをHとすると通電しますので、駐車監視用手動スイッチやタイマー回路等を接続することもできます。

以下タイミングチャートを用いて回路の動作を示します。

※キー位置と電源の動作については参考、クルマの電源についてをご覧ください。
+α構成タイミングチャート
前提として回路はR5およびR11により入力がプルダウンされており、デフォルト状態では全てLとなります。
また、MANUALは使用せずGNDへプルダウン(L固定)されているものとします。
駐車
駐車中はキー位置がOFFであり、"ACC電源"・"IG1電源"共に通電しておらず、回路はACC・IG1共にLとなります。よってOR回路の出力はL、AND回路の出力もLとなりOUTはLで通電しません。
またTr1~Tr4は全てOFF状態になっており、電源コントローラ回路自体の待機消費電流も流れません。
初回ACC使用(駐車場/出発前ACC使用)
キー位置OFFの状態からACCへ回した場合、ACCがHになります。ところがIG1がLである為OR回路の出力はLのままで、AND回路の出力もLのままです。よってOUTもLのままとなり通電しません。
エンジン始動
エンジン始動時のキー位置は、ACC位置からONを経由しSTARTへ、その後ONへ戻ります。
ACC位置からON位置へ移行すると、"IG1電源"が通電します。つまりACCのみHの状態からIG1・ACC共にHの状態となります。結果、OR回路の出力がHとなり、OUTがHとなりへドラレコへ通電します。
次にSTART位置へ回すと、"ACC電源"は遮断されますが"IG1電源"は通電し続け、IG1のみHの状態となります。結果、OR回路の出力はHが維持され、スタータ作動中もドラレコはへ通電し続けます。
エンジン始動がが完了すると、再びIG1・ACC共にHの状態へ戻ります
手動アイドリングストップ
※前提として、オーディオを聴いているものとし、アイドリングストップ中はOFFまで戻さないものとします。(キー位置OFFでは駐車と同じ動作となりドラレコは遮断されます)

手動アイドリングストップ時は、キー位置をONからACCへ戻し待機します。するとIG1・ACC共にHの状態から、IG1がLとなりACCのみがHの状態になります。ここで追加したAND回路が役立ちます。
初回ACC時と異なり、直前の走行時状態でOUT・ACC共にHであるためAND回路の出力がHとなってます。そのため、IG1がLになってもOR回路の出力つまりOUTはHのままであり、ACCがである限りは通電状態が維持されます。
よって、一度通電した後のACC時、つまり交差点等でのアイドリングストップ中はドラレコが録画を継続します。
アイドリングストップ終了後の再始動動作は、エンジン始動時のON→START→ONと同様です。
エンスト再始動
エンジン始動時のON→START→ON同様の動作となります。
到着
到着後のキー位置はACCを通りOFFへ移行します。
ACCを通過している時は手動アイドリングストップ時同様OUTはHとなり通電していますが、OFFまで移行すると"ACC電源"が遮断されAND回路のACC入力がLになります。
結果 H and L となりANDの出力がLとなります。OFF位置ではIG1はLになっていますので、OR回路の出力もLとなりOUTはLへ移行し、ドラレコの録画が終了します。

※実際の回路ではC1およびドラレコ内の電解コンデンサの働きにより、OFF移行後ワンテンポ遅れてドラレコの電源が切れます。(動画をご参照ください)
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参考、クルマの電源について

本章では私の所有する旧型ジムニー(JB23 3型)で調べた結果を例に説明しております。
車種により異なる場合がありますので、回路を製作される方は必ずテスター等を使用してご自身のお車でご確認ください。

DIYで使う電源5種類

+B(常時電源、メイン、バックアップ、バッテリ+、バッ直)
キー位置に関係なく、駐車中やスターター作動時も含め常時来ている電源です。
使用するオーディオ取り付けケーブルや製品により様々な呼び方があります。
時計、ハザードランプ、リモコンキー、セキュリティアラーム等駐車中も必要な機器や、カーラジオの周波数等の各種メモリの記憶に使用されています。
DIYではカーオーディオ裏から簡単に取り出せますが、大電流が必要な機器の取り付け時にはバッテリーの端子から直接車室内に引き込む(いわゆる「バッ直」)場合もあります。
ACC(アクセサリー電源)
キー位置をACC以上に回すと通電する電源です。
車種によりスターター作動時に遮断されます。
カーオーディオやシガーソケットなどに使用され、停車中にエンジンを掛けずに使いたい軽めの負荷へ使用されています。
DIYではカーオーディオ裏から簡単に取り出せます。もちろんヒューズボックスからも取り出せます。
IG1(イグニッション電源1)
キー位置をONにした際に通電する電源です。
名前の通りのイグニッションコイル(スパークプラグで使用される高電圧を発生させるコイル)をはじめとして、各種ECU、ウインカー、スピードメーターなど走行・安全に欠かせない負荷へ使用されています。
エンジンECUが動かなければエンジンはかからないため、もちろんスターター作動中も通電します。 DIYではヒューズボックスから取り出すか、メーターなどの配線から分岐します。
IG2(イグニッション電源2)
IG1と同じく、キー位置をONにした際に通電する電源ですが、
車種によりスターター作動時に遮断されます。
エンジンがかかっていないと使えない負荷、例えばコンプレッサが回っていないと使えないエアコンや、オルタネータが回っていないと即バッテリーが上がるデフォッガなどの大電流負荷へ使用されています。
DIYではヒューズボックスから取り出すか、エアコンなどの配線から分岐します。
ILL(イルミネーション電源)
名前の通りヘッドライト連動の電源で、スモールライト以上で通電します。
エアコンやオーディオなどの操作パネル照明へ使用されています。
DIYではカーオーディオ裏から取り出すのが簡単で、光り物系の電源として使用されます。
他にもライトの配線から分岐して取り出す方法や、後付けライトなど大電流が欲しい場合は電源本体はバッ直で取り出しておいてILL電源はリレーのコントロールに使用するという方法も用いられます。
電源動作まとめ