ダイソー400円加湿器
ダイソーさんの新商品、400円USBミニ加湿器。
ちょっと自分にはパワー不足だったため、分解・改造して遊んでみました。
柑橘シリーズを例に分解方法、回路をご紹介します。

<ご注意>
このサイトを参考に分解を行い、火災、感電等がおきましても筆者は一切責任を取ることはできません。必ず自己責任で実施してください。
特に、この加湿器は昇圧回路を持っており、高電圧部があります。感電には十分ご注意ください。

1、分解

分解1_シリコーン取り外し
本体内部に水が浸入しないよう、シリコーンの防水パッキンがはめられています。
まずは精密ドライバー等の細いものを用いて、この防水パッキンを取り外します。
防水パッキンを外すとネジが3本ありますので、ねじを外すと回路基板と超音波トランスデューサが見えてきます。
分解2_内部
本体内部です。
中心の金属製の部品が心臓部である超音波トランスデューサです。
電子回路部はスイッチ基板と本体基板に分れており、本体基板側には照明用の表面実装タイプのLEDが2個搭載されています。

分解3_基板取り外し
基板を固定しているネジを取り外すと、回路部分をまとめて取り外しできます。
基板は面実装部品で構成されており、部品点数が少なく常にシンプルな印象を受けます。
能動部品はIC一つとトランジスタ一つだけです。

超音波トランスデューサ周辺にもシリコーンの防水パッキンが取り付けられていますが接着がされておらず、手で簡単に取り外し可能です。

分解4_超音波トランスデューサー周辺の分解
超音波トランスデューサー周辺のシリコーンの防水パッキンも接着されておらず、めくるだけで取り外せます。
超音波トランスデューサーは、中心にダイヤフラムが設けられた振動板と、ドーナツ状の圧電素子で構成されています。

分解5_ミスト発生の仕組み
超音波トランスデューサー中心のダイヤフラムに光を透かしてみますと、細かい網になっていることが分かります。

構造を見てみますと、ミストを発生させる仕組みは図のようになっており、網目状のダイヤフラムがポンプの役割と霧吹きの役割を兼ねていると考えられます。
圧電素子に超音波が加えられることで振動板が高速で振動し、ダイヤフラム内の空間が広がる際にはダイヤフラム内の圧力が下がることで芯から水をダイヤフラム内側へ吸い上げられ、 逆にダイヤフラム内の空間が狭まる際にはダイヤフラム内の水圧が上がることで水が網目により霧状になって空中へ放出されるという動作を繰り返している物と思われます。

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2、回路調査

ダイソー400円加湿器の内部回路
基板パターンをトレースして回路図を起こしてみました。
高速スイッチングのため、ICの5番ピンとMOSFETのゲート間がよく見かける抵抗ではなくコンデンサを介して接続されています。

ピエゾ両端電圧
P+ P-間の波形です。
※ 画面には2V/DIVレンジであると表示されておりますが、×10プローブを使用しているため、実際の電圧は20V/DIVです。
周波数は100kHz、振幅は50~60V程度(不安定)でした。

3、改造

改造
ここでは外部から超音波トランスデューサのON/OFFを制御できるように改造します
単純にUSB電源をON/OFFするだけですと、ICの電源を遮断するとロジック回路がリセットされ、ミストが停止してしまいます。
そこで昇圧トランスの一時側の電源端子を基板から外し、間にMOSFET等の素子を挿入できるように改造しました。
また、動作安定&ノイズ対策用の電解コンデンサを追加し、外部へ設ける電子回路へ電源を供給できるようにGNDも引き出しておきました。
ダイソー400円加湿器改造
改造箇所を回路図で示すと図のようになります。
+5V_Out と Power_In の間に制御素子を接続して外部から制御します。
例えばパワーMOSFETを接続すればON/OFFができますし、抵抗とスイッチを接続すればパワー切り替えが可能になります。
外部に電子回路を設ける場合は、+5V_Out と GND間からUSB電源を取り出します。

追加する電解コンデンサは、昇圧トランスの端子へできるだけ短い配線で接続します。
スペース的に厳しいため省略していますが、本来ならば高周波インピーダンスの低いセラミックコンデンサも並列に接続したほうが望ましいです。

また+5V_Out と Power_In の配線の引き出し長さは、外部の追加回路への配線に必要最小限な長さとします。
※長距離引き出したい場合は、MOSFET等の大電流部は最短配線で加湿器側へ追加し、制御端子を外へ引き出す方が望ましいです。 この加湿器のスイッチング周波数は100kHzであり、5次高調波はAM帯になります。
仮にコンデンサがない場合、外へ引き出した配線へ100kHzのON/OFF電流が流れますので、長い距離を引き延ばすとアンテナとして作用し盛大にノイズをまき散らす可能性が高いためです。

音声に反応してMOSFETをON/OFFする回路を追加してみました。
ダイソー400円加湿器を音に反応させる回路
撮影時に使用した回路です。
音を検出するECM(エレクトレッドコンデンサマイク)、増幅する2段直結エミッタ接地増幅回路、整流するエミッタフォロワ及び半波整流回路、加湿器への電源をON/OFF制御するスイッチング回路により構成しています。

理想ダイオード回路を使わず、簡易な回路で済ませる為に整流回路部に一工夫しています。
具体的には、半波整流部のダイオードは、カップリングコンデンサなしでエミッタホロワへ直接接続しています。
もしカップリングコンデンサを使ってACのみを半波整流に流した場合、交流の振幅が最低0.6VないとそもそもダイオードがONせず、小さい音では反応しません。 そこで直接エミッタへダイオードを接続することで、「直流バイアス+音声信号」の電圧がダイオードの順方向電圧(約0.7V)を上回ればダイオードがONするようになり、エミッタ電位が約0.7V程度になるように直流バイアスを調整しておくことにより理想ダイオードを使用しているときのように小さな振幅でもONさせることができます。

最終的にスイッチング回路の出力がONになる為には、上記半波整流回路のダイオードの順方向電圧にスイッチングトランジスタのベースエミッタ間順方向電圧を合わせた約1.4Vが必要になるため、エミッタ電位は1.2V程度になるようにバイアスを調整しています。