SR1323型 - ダイソーダイソー700円(税込770円)Bluetoothスピーカーの調査と分解

SR1323 型ダイソー700円Bluetoothスピーカー
2021年3月、レトロラジオのようなデザインのBluetoothスピーカーがリリースされました。
twitterでバズって入手困難となっていましたが、やっと入手できましたので調査・分解していきます。
SDカード再生は500円スピーカーで対応していましたが、特徴として回すタイプのアナログボリュームはダイソー700円スピーカーが初となります。

またこのスピーカー、耳が痛いほどの爆音を出せます。
どんなスピーカーユニット・アンプが入っているのか非常に気になります。

<ご注意>

このサイトを参考に分解を行い、火災、感電等がおきましても筆者は一切責任を取ることはできません。必ず自己責任で実施してください。

無線機器の改造は法律により禁止されています。
このスピーカーはケースもセットでの技適と思われます。改造しなくても「分解した状態で電源を入れる」だけで違反となります。ご注意ください。

1、外観と操作

ダイソー700円スピーカー 外観
700円スピーカーは充電端子も含め全ての操作部が前面にまとまっており、背面は平らな板になっています。
背面にはダイソースピーカー定番の大型技適マークが印刷されています。

充電端子はmicro USBです。
アナログボリュームはクリック感のあるタイプが使われており、回すときに「カチッカチッ」という感触があります。高級オーディオのような操作性が心地よいです。

そしてアナログボリュームの嬉しい点として、起動音を小さくできることもあります。
700円スピーカーも電源ON時、500円スピーカー(SR9910 ポータブルタイプ)と同じ起動音がします。
500円スピーカーの音量は起動音に対しては効かず、起動音が爆音でした。
一方、700円スピーカーの音量つまみは起動音に対しても効くため、爆音起動音に悩まされなくて済みます。

スピーカー部は大きな穴があいたデザインになっており、ボリュームを上げるとスピーカーの振動が見えるのが低音好きとして嬉しいポイントです。
またセンターキャップ(スピーカー内部中心の黒いドーム部分)の中心部に障害物がないため、ストレートに音が出てきて綺麗な高域再生ができます。

ケースは厚くて固い素材が使われており共振は少なく、さらに底面の足は柔らかい素材になっているため、振動が設置場所に伝わって変な共振音が出ることもありません。
充電ランプとSD
電源ボタンの下の2つの穴はLEDランプとなっています。
左側が青色の電源ランプ、右が赤色の充電ランプです。
電源ランプは停止中点灯、再生中低速点滅、ペアリング待ち高速点滅といった具合で状態表示も兼ねています。

SDカードは挿入方向が書かれていませんが、SDカードの端子側を上にして挿入します。
前から見ると、裏向きにして挿入する形になるため間違えないよう注意が必要です。

部屋の隅への設置が良い感じ

余談ですが、オーディオ界で「ライブな音」と呼ばれる、まるで音のシャワーを浴びるようなサウンドがお好きでしたら、部屋の隅に設置することをおススメします。
コーナー設置
700円スピーカーの「背面が平ら」「操作系がすべて前面にまとまっている」という特徴を生かすと、簡単に部屋の隅に壁に設置することができます。
部屋の構造や家具配置にもよりますが、ほとんど家具がなく、絨毯や寝具のような音を吸収する物が無い部屋ならば、ダイソーのスピーカーとは思えない響きを楽しめます。
また、部屋の角がメガホンのように作用し、低音が聞こえるようになります。
部屋の隅にはコンセントがあり、充電の面でも便利です。

ボタンは取説未記載の機能あり

ボタン操作ですが、試してみると取説に書かれていない機能が搭載されています。

※取説に書かかれていない操作をカッコ書きで示します。2021年3月モデルで試してみて見つけた操作方法であり、今後のモデルチェンジで変更される可能性があります。
ボタン操作
SDカード時に選曲ボタンを長押しすると巻戻し/早送りができます。
CDプレーヤーの巻戻し/早送りと同じような、スキップを繰り返すような音になります。
選曲ボタンと巻戻し/早送りボタンが兼用になっているCDラジカセのような操作性です。
ただし、「前曲」操作はCDラジカセと異なり、曲の途中で「前曲」操作をしても頭出しはできず、前の曲が再生されます。

Bluetoothモードでのペアリング/解除操作は、部屋に複数のBluetoothデバイスがあり、意図しないペアリングがされたときに便利です。
わざわざスマホの設定画面を呼び出して操作しなくても、ワンタッチでペアリングを解除できます。
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2、コーデック

Bluetoothスピーカーの音質に大きく影響を与えるのが、伝送コーデックです。
700円スピーカーは「Bluetooth 5.0以上のデバイス」に対応となっています。
ダイソー700円スピーカー スペック
「5.0未対応の古いスマホでは使えません」ということなのですが、そうなると気になってくるのはオーディオコーデックです。
5.0対応ならば仕様としては高音質オーディオコーデックに対応できますが、スマホやスピーカーが対応していなければ当然SBCしか使えません。

700円スピーカーの仕様書には対応コーデックが掛かれていませんから、Androidスマホの「開発者向けオプション」を使って調べてみました。 スマホは"Pixel 3a"、OSは"Android 11"です。

高音質コーデック非対応

ダイソー700円スピーカー コーデック
700円スピーカーを鳴らしている状態で開発者向けオプションを開き、スクロールしていくとBluetoothに関する項目が出てきます。

残念、詳細を開くまでもなくHDオーディオがグレーアウトしています。

”Bluetoothオーディオ コーデック”をタップしてみても、SBCしか選べません。

700円スピーカーは2021年3月時点におけるダイソースピーカーの中では「高級オーディオ」の位置にあります。
デザインも600円の「防滴性」や500円の「可搬性」とは違い、どちらかというと据え置きで使う想定をしていると思われるデザインです。
高音質コーデックに期待をしていたのですが、もう少し待つ必要がありそうです。

続いて700円スピーカー内部のD/Aコンバータ関係の性能を見てみます。
気になる点として、スピーカーが一つしか搭載されていない(モノラル)なのに"Bluetoothオーディオ チャンネルモード"が”ステレオ”になっています。
ダイソー700円スピーカー ステレオ伝送
音質は44.1kHz・16bitのみですが、CDと同じですのでD/Aコンバータの性能としては値段を考えれば十分と言えます。

チャンネルモードの詳細を見てみるとモノラルとステレオが選択できるようになっています。
つまりスマホからはステレオスピーカーと認識されており、700円スピーカー内部でモノラルにして出力しているということになります。
左右に移動する音源を再生してみても両チャンネルの音が聴こえてきますから、700円スピーカー内部では片チャンネルだけを取出すのではなく、きちんと左右ミックスして出力しているようです。

3.SDはwav再生可

SDカードで聴けるファイルは、mp3ファイルしか書かれていません。
500円スピーカー(SR9910 ポータブルタイプ)でも同じでしたが、SD/USBでwavファイルを再生できました。
試してみると今回の700円スピーカーでもSDでwavファイルを再生できます

先ほどコーデックの確認の際に、D/Aコンバータが44.1kHz/16bitに対応していることが分かりました。
これはCD音質に相当し、CDからwav形式で取り込んでおけばCDと同じ音質で聴くことができます。
処理速度についても、1141kbpsのCDから取り込んだデータを聴いてみましたが、音飛びすることなく再生できました。

以下のようなファイル形式を試してみました。
試したファイル
パッケージにはmp3し書かれていませんが、wavも認識され再生されました。
試した中ではwavとmp3以外は無かったことにされました。(選曲を押してもmp3とwavしか入ってないように振る舞う)。
取説に書かれてはいませんが、便利な機能として、mp3、wavともにリジューム機能があるようです。
SDカードは、電源OFFやBluetoothモードへの切り替えをしても、再度SDを聴いた際に前回聴いていた部分を覚えていて再生が再開されます。
SDコンポで録ったラジオ番組のような、長時間データを聴く際に便利と思われます。

また、再生機能とは関係ありませんが、SDモードを選択した際、"Play by SD card."としゃべります。
先代のSR9910 500円スピーカー(ポータブルタイプ)では、"Play by TF card."としゃべっていました。
同じものの別名ですが、一般的な言い方に変わったようです。
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4、分解

次は、中身を見ていきましょう。
ボリュームつまみ外す
まずはボリュームつまみを取り外します。

内部の基板は裏ブタで抑える構造になっており、先に裏のネジを外すとグラグラしてつまみを外しづらくなります。

ボリュームは軸に差し込まれているだけですが、固くて引っ張るだけでは抜けませんでした。
指でつまみを引っ張りながら、小さな精密ドライバで少しずつ外していきました。
目盛版の周りの銀色のリングが凸形状になっており傷が付きやすいため、ドライバーを差し込む場合は注意が必要です。

シャフトはラジカセ等でも良く見る一部を平らにしたタイプで、分解せずにできるカスタマイズとしてつまみを交換することもできそうです。

ボリュームシャフト周辺を見ると、半透明の目盛版の裏に空間があることが分かます。
LEDを追加して目盛板を光らせたくなりますが、残念ながら技適製品です。

ケースとバッテリー

分解
続いて背面のネジを外せばケースが開き、分解ができます。
内部に固定ねじはなく、はめ込みんだ上で裏ブタで押さえる固定方法となっています。
スピーカーも接着されておらず、後ろから蓋で押さえる形になっています。

バッテリーは、モバイルバッテリー内部で使われているような筒状の大型のタイプが搭載されています。
500円スピーカーまでは小さな板状のタイプが使われていました。
他の製品と容量を比べてみると、
・SR9901 600円(防滴タイプ) 300mAh
・SR9910 500円(ポータブルタイプ) 500mAh
・SR1323 700円(レトロタイプ) 1200mAh
と、今までのSRシリーズに対し大幅に容量が増えています。

ケースは、内部空間が2つに分けられた2階建て構造になっており、上半分が密閉型エンクロージャ、下半分がアンプ用のスペースとなっています。
アンプスペースとスピーカースペースの仕切りには、スポンジによる空気漏れ対策もしっかり施されています。

スピーカー一体型オーディオで内部がセパレート型構造になっている設計は、かつて高価格帯のCDラジカセで見られたような設計です。
700円とは思えないほど音質を考えた設計がされていて驚きです。
この手のスピーカーでありがちな、大音量時に充電端子などから空気が漏れて音が濁るということも、この設計ならば起こりません。
実際、音量を最大にしてもエンクロージャがビビることもなく、クリアな音を楽しめます。

ただし、アンプ部の空間が使えない分エンクロージャ容積は小さくなってしまうため、低音に対しては不利になります。

スピーカーユニット

スピーカー
スピーカーです。
とにかくマグネットが大きい!
フレームからはみ出しそうなほど大きな大きなマグネットが付いています。
マグネットと振動板のサイズがほぼ同じ、高級オーディオ用スピーカーのミニチュア版のようです!
これほど大きなマグネットがついていれば、Li-ion一つ、電源電圧3.7Vとは思えない爆音も納得です。
空気漏れ対策や振動対策が施された内部設計も、このマグネットに負けないためには必要でしょう。

アンプ部との2階建て構造を生かしてダブルバスレフに改造したくなりますが、残念ながら技適に引っかかります。

基板

基板
続いて基板を見てみます。
ICはBluetooth・制御用チップが一つ、オーディオアンプ用チップが一つ載っています。
スイッチや端子類も、全て1枚の基板にまとめられています。
実装はされていませんが、"MIC"と書かれた端子が用意されており、ハンズフリー機能を持つスピーカーと共通基板になっているようです。
基板に書かれた日付を見ると"20191028"とあり、1年以上前に設計された基板が流用されていることが分かります。
元はハンズフリー機能付きの別の製品として作られていたものが、ダイソースピーカーに流用されたのかもしれません。
基板の型番"HS-MY-MS2025"で検索して見ましたが、別のスピーカーの分解記事は出てきませんでした。

ボリュームはステレオ用が使用されていますが、アンプはモノラルであり、ボリュームのパターンを見ても一回路しか使用されていません。
これは、ボリュームの固定のためと思われます。
ボリューム
もし1列のモノラル用のボリュームを使うと、図のようにボリュームがグラつきやがて金属疲労で折れてしまいます。
ステレオ用であれば、足が2列ありますからぐらつきません。
もちろんシャフト根元部にあるネジを使って固定することもできますし、モノラル用のボリュームでもグラつき防止脚が付いたもの・基板と接する面が広くなっているものもありますが、コストやサイズの関係でステレオ用を選択したものと推測します。

IC

IC
ICはBluetooth/SD/制御用が "AC19AP21298-28B4"、
オーディオアンプ用が "MIX2018A" です。
Bluetoothチップについてはデータシートが見つかりませんでした。
型番から、SR9910 500円スピーカー(ポータブルタイプ)で使用されていた "AC19AP1Y109-28B4" の姉妹品と思われます。

アンプ部は、Can☆Doの500円USBミニスピーカーに使われいるICと同じで、Vcc2.5V~5Vまで使用できるBTLオーディオアンプです。
電源電圧5V・負荷2Ωにおいて最大出力5Wが取れるアンプで、300円USB・500円・600円Bluetoothスピーカーに使用されていた3Wのアンプよりパワーアップしています。

以上、2021年に発売されたダイソー700円スピーカー(レトロタイプ)の調査でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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