1、かなり特殊な構造
このラジオ、何とも不思議な構造になっています。
フロントパネルを外すと、隠しスイッチと隠しつまみが出てきます。
隠しつまみは回してみるとちゃんと機能します。(というよりも表示がないため回してみて何のつまみか調べました)
カセットなしのラジオ単品モデルと共通設計になっているのでしょうか?
それともカセットデッキとの切り替えた時の音質差を補正するためのものなのでしょうか。
ググってみましたが画像が見つからず真実は分かりませんでした。(つまみが低音・高音・バランス・フェードに分れているタイプは画像が見つかりました。シャーシをよく見ると、可変抵抗を4つ並べて取り付けることも可能な構造になっています。)
2、ピン配置
ググったりパターントレースしたりしながらピン配置を調べました。
車両側へ接続される9ピンコネクタのほか、カセットデッキを接続する7ピンDINコネクタが設けられています。
マイコン制御でない時代のアナログな回路更生のため、電源は入出力どちらでもよいみたいです。
具体的には、車両では9ピンコネクタから給電しますが、DINコネクタから給電しても動作します。他にも、電源出力端子であるはずのアンテナコントロール(電動格納アンテナ)端子へ12Vを印加すると、普通にチューナーが動作します。
また、DINコネクタのラインレベル端子は、ライン入力/出力兼用になっているようです。
具体的には、ラジオ基板側の出力部が極めて低インピーダンスなOPアンプ(プッシュプル出力段)ではなく、エミッタ抵抗1kΩのエミッタフォロワになっているため、外部から信号を入力しても短絡されることはありません。
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3、考えられる3つの使い方
ピン配置と内部回路を見ていると下記3種類の使い方が考えられます。- 内蔵アンプでラジオを聴く
- 内蔵アンプでラジオ+外部入力を聴く(ミキシング)
- 外部アンプでラジオを聴く
家庭での使用を前提としておりますので、電源はACアダプタで給電するものとして描いています。
旧車のカーラジオはプリセットが機械式になっているため常時電源が不要であり、家庭での使用に適しています。
3-1、内蔵アンプでラジオを聴く
最もスタンダードな使い方になります。
このラジオ特有かもしれませんが、ACC電源を供給して電源をONにしてもアンプ部が動作しません。ここに1時間くらいハマまりました。
カセットデッキを接続するDINコネクタ内にアンプ電源制御用の端子があり、ラジオを聴く場合だけであってもラジオ連動でアンプが動作するよう配線してあげる必要があります。
アンプの電源制御端子は、内部でアンプ電源を制御するリレーのコイルに接続されており、DC12Vを印加することでリレーがONしてアンプ電源が入ります。
周波数目盛のバックライトを光らせたい場合は、電動格納アンテナを制御するためのラジオSW連動出力とILLを接続しておくことで、ラジオ電源連動で光らせることができます。
それにしてもアンプ電源制御にリレーが用いられている点には時代を感じますね。
マイコン制御時代のカーオーディオも何台か分解したことがありますが、アンプICはロジックレベル入力で制御できるスタンバイ端子を備えており、IC内部に無接点の電源制御回路を持っているものが多かったです。
スタンバイ機能が無いICの場合でもMOS-FETなどの大容量半導体スイッチが使用されており、リレーで制御している回路はこのラジオで初めて見ました。
3-2、内蔵アンプでラジオ+外部入力を聴く(ミキシング)
おそらくメーカーが想定していない使い方になりますが、内部回路をみると行けそうなので試してみたところ上手くいきましたのでご紹介します。
ラジオを聴いていてもスマホやPCの通知音が聴こえる便利な回路です!
音量・音質調整などは、ラジオ・外部どちらの入力にも働きます。
9ピンコネクタ側は3-1と同じで、DINコネクタ側に一工夫します。
1 ラジオスイッチがOFFの場合
外部入力のみを聴くモードになります。
外部に設けたスイッチ S でアンプ電源をON/OFFします。
外部スイッチをONにすると、チューナ回路は通電せずアンプだけがONになりますので、外部入力の信号がアンプ部に入力されます。
音量やバランス調整などは、外部入力に対しても有効に働きます。
なおチューナー部は、チューナー出力段のエミッタホロワトランジスタがOFFとなることで切り離された状態となります。
2 ラジオスイッチがONの場合
ラジオを聴くモードになります。外部入力に信号入った場合は、ミキシングされて聴こえます。
スイッチ S がOFFであってもダイオード D によりアンプの電源はONとなります。
DINコネクタの音声端子にはラジオの音声が出力されてきますので、外部入力へ接続する機器に逆流しないようにバッファが必要になります。
また、OPアンプのボルテージフォロワなど、低インピーダンスのバッファを使用する場合、ラジオの音声が短絡されて聴こえなくなってしまうため、1kΩ前後のミキシング抵抗を介してラジオとミキシングされるようにします。
シングルのエミッタホロワ等、ある程度の出力インピーダンスを持つバッファを使用する場合は、ミキシング抵抗は不要です。(イメージでは、点線部の三角形の中に抵抗が入る形になります。)
ラジオ側の出力段は、出力インピーダンス1kΩのエミッタホロワとなっておりますので、外部入力周りも出力インピーダンス1kΩ前後にしておくのが好ましいと思われます。
なお、ヘッドホン端子等の出力インピーダンスが低い入力を接続する場合、バッファなしで抵抗のみでもミキシング可能ですが、万一の際に大切なPCやスマホを破損しないようにバッファを入れておくことをお勧めします。
周波数目盛のバックライトを光らせたい場合は、ラジオ電源連動としたい場合はラジオSW連動出力とILLを接続し、アンプ電源連動(=外部入力モードでも点灯)としたい場合はアンプ制御電源とILLを接続しておきます。
3-3、外部アンプでラジオを聴く
内蔵アンプは使用せず、ラジオチューナーとして使用する使い方です。
ラジオ側の音量・音質調整は使用できないため、外部アンプ側にボリューム調整機能等を備えている必要があります。
内蔵アンプを使用しない分、消費電流が少なく済むため、DINコネクタのACC端子から電源供給が可能です。
バックライトONで0.3A程度で、DINコネクタの許容電流1A※に対しだいぶ余裕があります。
※出典:DINコネクター | マルツオンライン
3種の使い方をご紹介しましたが、私は最終的にチューナーとして使用する方法を選択しました。
元々あるオーディオ機器と統合しておきたかったことと、内蔵アンプを使用する場合はフロントパネルに穴あけ改造が必要になるためです
接続には、7ピンDINコネクタを通販で購入し、専用ケーブルを自作して使用しています。
ラジオ連動電源とILL電源はコネクタ内部で結線しておく方がすっきりしますが、ブースター等の別のラジオ連動回路を追加したくなる場合に備え、外へ引き出してギボシ端子で外部で結線しています。
また、AMラジオへ混入するスイッチングACアダプタのノイズを少しでも減らすため、オーディオ用の電解コンデンサをDCジャック部へ取り付けています。
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4、音途切れの修理(改造)
ラジオを聴いていると、左chの音が「ポツッ」というノイズが入り鳴ったり鳴らなかったりという症状が出てきました。
調べてみるとラジオ基板の出力段に入っている、ノイズ対策かLPF用と思われるコンデンサが内部でショートしていました。
本来は交換とすべきですが、33kΩと680pFの遮断周波数は
1/(2π*680p*33k) = 7.1(kHz)
FM放送を高音質で聴きたい家庭用チューナーとしては見直す必要がありそうです。
そこで MPX復調IC AN7414のデータシートを調べると、IC側にコンデンサ0.022μFがあるだけでよく(ここでは0.015μF)、2次フィルタにする必要性もなさそうだったため思い切って改造(撤去)しました。
電波状態が悪いときのノイズが若干耳につくようになりましたが、音楽放送を聴く場合などクリアな音質が楽しめるようになりました。
なお、参考として音が出ていない時にオシロスコープで調べてみると、下記のようになっていました。
- コレクタ電圧は電源電圧
- AN7414の出力は直流バイアス+音声波形が出ている
- トランジスタのベース電圧が0V
まずは、トランジスタを交換してみましたが全く変わらず・・・。
次に680pFを取り外してみたら直ったという流れでした。