リコー教育/パイオニア CP-10A「ぱんぷきん」 分解・回路トレース


通っていた幼稚園にあった、昭和レトロな懐かしいカセットプレーヤをジャンクで入手しましたので分解・回路トレースしました。

<ご注意>
このサイトを参考に実験を行い、火災、感電等がおきましても筆者は一切責任を取ることはできません。必ず自己責任で実施してください。

1. CP-10A ぱんぷきん

CP-10A「ぱんぷきん」
レトロな教育用のカセットプレーヤです。
販売がリコー教育機器、製造がパイオニアです。
再生専用で、カーオーディオみたいにテープを差し込むタイプです。
ただしカセットテープの側面ではなく底面をデッキに差し込みます。

2. 回路図トレース

ネジ2本とボリュームの固定ナットを外し、シャーシから基板を取り外しました。
全てリード部品の片面基板、ディスクリートトランジスタが目立ちます。
トランジスタ 6石 + IC 1個 です。 CP-10A「ぱんぷきん」 基板 パターンを回路をトレースして回路図を起こします。 CP-10A「ぱんぷきん」 回路図

プリアンプ部

プリアンプ部はディスクリートです。
ディスクリート時代のテレコやラジカセで見かけるような、2段直結エミッタ接地 + NFB の教科書的な構成です。
イコライザ用とマイクミキシング用に類似構成のアンプが並んでおり、イコライザ用は帰還素子に周波数特性を持たせて再生イコライザが構成されています。
同じ構成でNFB部を変えることで回路でフラットアンプとイコライザアンプを実現し比較できるようにしているのは、教材用ということで教育的配慮でしょうか。

マイクは入力インピーダンス 470Ω でプラグインパワーではありません。
ダイナミックマイクを想定した入力回路になっているようです。
AGC回路などもなくフラットアンプだけですから、抵抗1本挟んであげればヘッドフォン端子から入力して鳴らすことができます。
ただしマイク入力側は音量調整を通らないため、接続機器側で音量調整する必要があります。

音量調整に特徴があります。
1番ピンとGND間に150Ωが挿入されており、絞り切っても無音にならないようになっています。
またテープ側回路だけに音量調整が入っています。

可変抵抗による音量調整はワイパ位置により出力インピーダンスが変化しますから、マイク側と単純に抵抗で MIX するために音量調整後にエミッタフォロワによるバッファを通ります。

パワーアンプ部

残念ながらディスクリートではなく、ROHM のワンチップIC BA527 が使用されています。

協立エレショップのサイトでデータシートを閲覧できます

この手のポータブルカセット・ラジカセ用に設計された石で、出力段は準コンプリメンタリ、 電源電圧 6V、負荷 4Ω時、0.8Wの出力が得られるようです。

スピーカーユニットの能率が高いのか、耳をふさがないと最大にできないほどの音量で鳴ります。
幼稚園ではこの 「ぱんぷきん」 でダンスするなどしていた記憶があります。
放送設備用ハイインピーダンススピーカーも定格出力1Wであることを考えれば、スピーカーユニットの能率が高ければ教室程度の広さなら 0.8W で実用になるのだと思われます。

電源部

電源はACアダプタと単2電池の2電源に対応しており、6V 330mA のACアダプタが付属します。

カセットを差し込むとスイッチが入りアンプとモーターに通電するようになっています。

電源のフィルタはディスクリート回路らしいCRフィルタの2段構えになっており、そこそこ信号レベルの高いプリ部は1次、初段は2次の電源フィルタを通してモーターのノイズを除去しているようです。

LED駆動回路に特徴があり、シンプルの抵抗1本ではなくトランジスタを用いた駆動回路が組まれています。
駆動回路はベースに分圧回路が入ったエミッタフォロワとなっており、LED の Vf を 1.8V、トランジスタの Vbe を 0.6V と仮定すると、点灯閾値電圧は約 4.3V となっています。

単純に抵抗1本ですと 2V 程度まで点灯しますが、子供受けのプレーヤーということで過放電で液漏れ前に消灯させて電池交換を促すような回路になっているのだと思います。

3. スピーカー

CP-10A「ぱんぷきん」 スピーカー フェライトマグネットの10cmフルレンジユニット "10-500A" が載っています。
パイオニアブランドです。旧ロゴが時代を感じます。
中高域寄りの音質です。

4. テープメカ

CP-10A「ぱんぷきん」 テープメカ 金属製メカで、コストがかけられている印象です。高級レトロラジカセのようなメカです。
銀色ではなく金色にメッキされたメカに時代を感じます。
キャプスタンのフライホイールもステレオ用テープデッキのような大径で全体が金属製のものが使用されています。
キャプスタンモーターはマブチ製の制御回路内蔵型が1個です。
CP-10A「ぱんぷきん」 テープ挿入時 テープを挿入した際は、カーオーディオのようにテープが下がっていくのではなく、メカ(シャフトとキャプスタン)側が持ち上がってきます。