ダイソー300円USBミニスピーカーで遊ぶ

キャンドゥから登場したライバル機も早速分解調査!詳細は下記リンクから!
キャンドゥ(CanDo)550円USBミニスピーカーの分解改造

重要 2020年バージョンについて

YouTubeへのコメントにて、2020年1月時点で購入した物が2017年バージョンの基板(EST-8002AC)に戻っていたという情報を頂きました。
ダイソーでこれから購入される際は X-8002基板ではない可能性があります。

2019/4/21追記 ニューバージョンについて

ダイソー300円USBミニスピーカーも気づけば発売から1年半。
最近新しくなったとのことで 早速入手して分解したところ、アンプ基板周辺が生まれ変わっています。
一方心臓部は据え置き、つまり超高コスパマグネットは健在です!!!

以下比較をまとめておきます。
ダイソー300円USBミニスピーカーの新旧比較
  1. ボリュームつまみに+・-のマーク追加
  2. アンプ基板がねじ止め固定からはめ込みへ変更
  3. アンプ基板全面変更 (詳細は 1、回路の調査 で後述します)
詳細につきましては本文中の該当箇所に新モデルの情報を適宜追記しました。

聴いた感じの印象としては、しっかりとした低音が鳴るようになり、キンキンした感じが収まり、落ち着いたピュアな感じの音になっています。

<ご注意>
このサイトを参考に改造を行い、火災、感電、PCの故障等がおきましても筆者は一切責任を取ることはできません。必ず自己責任で実施してください。

2019年モデルからアンプ基板が更新(X-8002)されています。現時点では2017年版(EST-8002AC)の部品番号/定数で記載しております。
・ブラウザの幅を小さくする(縦画面にする)と小さい文字でごちょごちょ書いてある計算式を非表示にしてご覧いただけます。

0、はじめに

ダイソー300円USBミニスピーカー内部
最近ネットで話題になっているダイソーの300円USBミニスピーカー。
入手してみると値段の割に磁気回路がしっかりしており、エッジや振動版もしっかりした作りでなかなかの高音質。
また卓上で聴くにはパワーを持て余すほどのアンプが搭載されています。
ICを調べると、教科書に出てきそうなほど単純なOPアンプによる逆相(反転)増幅回路のBTL回路!これは楽しいおもちゃになりそう!
とにかくこのスピーカーのボトルネックは低音再生であり、低域改善を中心にいろいろ試していきます。

入門にオススメ!まずはペットボトルによるお手軽ダブルバスレフと外付けバスブーストでマグネットを能力覚醒

なんと「分解・改造なし」で300円スピーカーの小さなエンクロージャーに隠されてしまっていた強力マグネットがもつ本来の能力を覚醒させ驚くような低音を出すことに成功しました
ペットボトルと厚紙だけというエコロジー&エコノミーなダブルバスレフエンクロージャーの上にスピーカー本体を「置くだけ」で低域再生領域がグッと伸び、そして入力ケーブルと音源の間に教科書に載っているような超シンプルな受動式CRバスブーストを「繋ぐだけ」でバスレフポートからボーンと低音が響いてきます!
※動画の中で作り方の解説もしています。
動画はイヤホン・ヘッドホン・大型スピーカー等の低音の聴こえる環境でお楽しみ頂けると幸いです。

強力マグネットの実力を確認したところで、内部をいじっていきます。

1、回路の調査

ダイソー300円USBミニスピーカー内部アンプ基板
ダイソースピーカーのアンプ基板です。左右独立でICアンプが載っています。
2017年モデルには電源ランプ用LEDをつける端子がありますが部品は載っていません。
2019年モデルにも、LED用と思われるVccから抵抗(実装されていない)を通り、いかにもコードをはんだ付けできそうな端子へ至るパターンがありますが、こちらも旧モデル同様実装されていません。

コストカットで設計変更されたのか、他のUSBスピーカー用に設計された在庫基板を流用しているだけのかはわかりませんが、改造してLEDを付けてみるのも面白いかもしれません。

まずは回路を調べないと改造できないため、パターンをトレースし回路図を起こします。
ダイソー300円USBミニスピーカー内部アンプ基板トレース回路図&C測定値 ダイソー300円USBミニスピーカー内部アンプ基板トレース回路図2019
チップコンデンサは値が書かれていませんが、2017年版は改造しすぎて壊れた内蔵アンプをパターンカットし、RC直列回路の理論を用いて測定してみました。
測定方法等は長くなるので最後に飛ばしてあります。 7、2017版のチップコンデンサ測定 をご覧ください。

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2017年モデルのアンプには8002AというICが使われてます。検索して出てきたpdfデータシート

http://thaieasyelec.com/downloads/EFDV308/HXJ8002_Miniature_Audio_Amplifier_Datasheet.pdf

を見ると、中身は仮想グラウンドを使った単純な単電源OPアンプによるBTLアンプでした。

データシートには
"The 8002 is unity-gain stable and can be configured by external gain-setting resistors"
とあります。ユニティ・ゲイン安定(裸利得を全てNFBに回すという厳しい使い方ある利得1倍のバッファ回路を作っても発振しない)であり、利得の設定は外部抵抗で自由に可能であるということです。

2019年モデルも、回路が全く同じですので、コンパチ品思われます。

オーディオアンプICは帰還抵抗がIC内部に組み込まれていて利得がいじれなかったり、いじれてもユニティゲインや低ゲインは発振するからダメという品種が多い中、
8002Aは内部位相補償型の単なるパワーOPアンプだから好きに改造してね!正相・逆相入力共にピンで出しておいたよ!と言わんばかりです。300円スピーカーはOPアンプの学習教材にも使えそうです。

データシートでは1段目のアンプの利得を1倍として最終利得2倍で組んでありますが、ダイソーSP 2017年モデルは1段目を3.24倍とし最終利得約6.5倍、2019年モデルでは1段目を約2.2倍とし最終利得4.4倍で組まれています。

※補足
2017年モデルでは、
逆相増幅回路の利得
= |-Rf/Ri| = |-22k / 6.8k| ≒ 3.24
ただし-は位相が反転する意味です。
8002AはBTL回路のためスピーカへは2倍の電圧が印加され
最終的な利得
= 2 * 3.24 ≒ 6.5
となります。
2019年モデルではRf = 10kΩとなるため、最終利得は4.4倍となります。

このICにはマイコン等から電源を制御する端子(1番ピン)がありますが、常時プルダウン(常時電源ON)されています。
また小信号グラウンドと大電流グラウンドは100Ωの抵抗(2017年版ではなぜかCと印字)で分離されています。
以降本ページ内でOPアンプの記号を用いるときは、3・4・5番ピンのOPアンプを意味します。
入力カップリング823でシミュレーション

次に0.082μFという見るからに低音が出なさそうな入力カップリングコンデンサの破壊力を確認しておきます。
理想OPアンプ(周波数特性無制限、出力インピーダンスゼロなど、計算を簡単にするために用いる理想的な特性を持ったOPアンプ)で周波数特性シミュレーションしてみると・・・これはひどすぎます。
カットオフ周波数を計算すると約285Hzになり、低音楽器をバッサリ切り捨てています。もはやカップリングコンデンサではなくハイパスフィルタです。
ダイソー300円スピーカーは低音が「出ない」のではなく、あえて低音を「出さない」ということみたいです。
発熱やエンクロージャの歪低減を考えての設計だと思いますが、コントラバス/4弦ベースの最低音41.2Hzは言うまでもなく、ギターの最低音82.4Hzまでもが切り捨てられてしまいます。
オリジナルの特性のままでは、音楽再生には厳しいものがあります。
聴く曲のジャンルによっては、内蔵アンプを使用する場合は次章の低域改善改造が必須になってきそうです。

2、低域改善下準備

入力カップリングコンデンサ(C3 / C4)が小さすぎて低音が出ないので、数μFのコンデンサを並列にして下準備します。耳で聞いてわかるほどHPF効果がかかっているため、元から低音が出る音源ですとこの改造を行うだけでも高音質化されます。
NF型バスブースト回路やトーンコントロール回路を試される場合は下準備をセットで行うことをお勧めします。オリジナルのままでは全くブースト効果が得られません。
入力カップリング改善シミュレーション
単電源アンプの場合直流カットの入力カップリングコンデンサが必要ですが、容量が小さすぎると入力インピーダンスによりハイパスフィルタを形成し、可聴域まで減衰してしまいます。
300円アンプと同じ定数の反転アンプを理想OPアンプで組み、コンデンサの値を変えてシミュレーションを行うと、図のようになります。

なおこの改造で音量を最大に上げると歪むようになるため、電源の電解コンデンサを追加してみたり、ケーブルを太くしてみたり、USB電源を強力なスマホ急速充電器から取ってみたり・・・とオーディオの泥沼への入り口となります(笑)

反転増幅回路の入力インピーダンスは入力抵抗と同じになるため、ここでは6.8kΩとなります。またハイパスフィルタの遮断(カットオフ)周波数(=ゲインが3dB下がる周波数)は
f_cutoff = 1/2πCR (Hz)
で与えられます。例えば0.1μFの場合
1 / (2*3.14*6800*0.1*10^-6) = 234Hz
となりシミュレーション波形でみると確かにその辺りで3dB下がっています。
バスブーストとトーンコントロールの動画の中では3.3μFを使っていますが、その場合は
1 / (2*3.14*6800*3.3*10^-6) = 7Hz
となります。(ただし元からついているC3/C4は無視)

3、NF型バスブースト回路

筐体が小さく低域がスカスカなため、バスブースト回路を追加してみます。
バスブースト回路にはNF型とCR型の2種類があり、3章ではNF型を試します。
NFとはネガティブ・フィードバックの頭文字で、文字通りアンプのNFB回路に周波数特性を持たせることでバスブースト特性を実現する方法です。
電源が必要なアンプ(能動素子)を使って実現するため、能動型やアクティブ型とも呼ばれます。

バスブースト回路
回路図の赤枠部分が追加回路です。
入力カップリングコンデンサには3.3μFを並列接続し低域改善したうえで、帰還抵抗にRC直列回路を追加し周波数特性を持たせています。
またスイッチをつけてON/OFFできるようにしています。(スイッチを閉じるとバスブーストが無効になります。)

よろしければ本回路のYouTube動画もご覧ください。
https://youtu.be/-aVkwHJoDFM

バスブースト回路シミュレーション
改造回路を理想OPアンプでシミュレーションしてみます。
なお「バスブースト」とは言っていますが、実際は中高域の利得を下げることで相対的に低域が大きく聞こえるように改造しています。

前提条件

  • スピーカー側にボリュームが備えられている場合、パソコン側のボリュームは十分に上げて使うためスピーカー側のゲインは低くて構いません
    スピーカー側のゲインを上げてパソコン側の音量を下げると、PC側のヘッドホンアンプのノイズを多く増幅してしまいS/Nが悪化するためです。
    またアナログアッテネータを備えていないD/Aコンバータや、備えていてもweb上の動画プレーヤの音量つまみなどでソフトウェア的に音量を下げると、デジタル演算によりボリュームを絞る為にD/Aコンバータの分解能をフルに生かしきれず音質が低下します。
  • 無改造状態において、パソコン側を最大にしたうえでスピーカー側まで最大にすることは通常ありません。つまりスピーカー側に利得に余裕があります
    PC横で中高域をフルパワーで鳴らしたら、もう耳鳴りがするレベルです。スマホ(nexus6)の騒音計アプリで30cm離して80dBまで振ります。アプリによると「地下鉄・掃除機」レベルだそうです。
以上により、「低音はオリジナルの利得にし、中高域の利得を下げる」方向で改造しても、スピーカー側の余裕を有効活用するだけで実用上特に問題は感じません。
周波数特性は、コンデンサが高域を通過し低域を阻止する性質を用いて実現します。
スイッチを開いている場合は帰還抵抗が低域に対してはオリジナルの22kΩ、高域に対しては並列の約3.9kΩとなります。
一方スイッチを閉じると全体域で3.9kΩとなります。
ブースト量は、反転増幅回路の
利得=帰還抵抗/入力抵抗
より、基本利得が
3.9k/6.8k (倍)
ブースト利得が
22k/6.8k (倍)
であるため、
(22k/6.8k) / (3.9k/6.8k)
= 22/3.9 (倍) = 約5.6倍
となります。
これをdBで表せば
20log10(22/3.9) = 約15dB
ブーストとなりシミュレーション波形通りになります。
ちなみにC(F)のコンデンサはf(Hz)の信号に対し (1 / 2πfC)Ω となります(ただし位相無視)。


バスブースト回路定数変更シミュレーション
バスブーストの効き具合は、追加する抵抗RやコンデンサCの値を調整することで変更することが可能です。
シミュレーショングラフのように、Cを調整するとブーストとされる周波数が、Rを調整するとブースト量(実際はオリジナルからの中高域ゲイン下げ幅)を変えられます。

4、CR型(繋ぐだけ)バスブースト

3章より簡単なバスブーストとして、入力ケーブルと音源の間に繋ぐだけで使用可能な受動タイプの回路もあります。
NF型と異なり、CR型は受動素子であるC(コンデンサ)とR(抵抗器)のみによりバスブーストの周波数特性を実現します。
バスブースト部自体は電源不要で動作し、受動型やパッシブ型とも呼ばれます。
ただし、バスブースト部にアンプを持たないため当然ゲインを持たせることはできず、正確には”ブースト”するわけではなく、中高域を減衰させることで相対的に低音域が強調されて聞こえるという仕組みです。

それでは、冒頭のペットボトルダブルバスレフの動画で使用した定数を用いて、理想OPアンプによるシミュレーションをしてみます。
繋ぐだけバスブーストシミュレーション
CR型は入力ケーブルに接続すればよいため、外付けタイプとしてアンプ部の改造不要での使用も可能です。
ただし、改造なしの場合はアンプ部の入力カップリングコンデンサによるハイパスフィルタの特性と、バスブースト回路との重ね合わせになります。
よって、トータルの特性はバンドパスフィルタのような特性になり、数十ヘルツの重低音はブーストされません。
動画で組み合わせたダブルバスレフ型エンクロージャは共振周波数より低い重低音は急激に減衰する特性を持っており、アンプから重低音を出力しても歪むだけである為、このようなバンドパス特性でも大丈夫です。

重低音まで特性が伸びる密閉型エンクロージャに改造したい場合など、重低音までしっかりブーストしたい場合は、アンプ側に2章の低域改善改造を施せば、CR型でも十分なバスブースト特性が得られます。

5、NF型音質調整(トーンコントロール)回路

ON/OFFのみバスブースト回路だけでは物足りないのでDAX型を元にNF型トーンコントロール回路をつけてみました。低域の調整はもちろん、高域の調整もできます。
NF型バスブースト同様に、アンプのNFBに周波数特性を持たせることで音質を制御します。
可変抵抗器により低音・高音のブースト・カット量を自由に調整できるため、利用シーンや曲のジャンルに応じて音質を自由に調整できます。

動画の撮影時に使用した回路を示します。改造箇所は図の囲ってある部分です。
トーンコントロール回路
以下のYouTube動画撮影時に使用した、スマホのマイクでも変化が拾えるような極端な特性の回路図です。
https://youtu.be/g_zIvoGvpDo
トーンコントロールシミュレーション
動画の定数でのシミュレーションです。
耳だけで合わせた回路な為、フラット時は特性がうねり、両方同時に動かすと中域のボリュームまで変わってます。
逆にスピーカーが小さい分フラット時に軽いバスブーストがかかるようになっているのは計算で合わせてないからならではです。

6、内蔵アンプ故障とパッシブ化

2017/12月某日、「ポッ」という音とともに蚊の鳴くような小さな音しか出なくなってしまった300円スピーカー。調べてみるとICが壊れた模様。
ヘッドホンアンプ等、ポップノイズが出るような信号源へ繋ぐと壊れることがあるみたいなので注意が必要です。
壊れたのは2回目で、3台目を買ってももはやスピーカーユニットを使う場所がないため(1台目はパッシブ化してトイレへラジオが流れるようにしています)、ICを載せ替えることも考えましたが、やっぱ自作アンプで鳴らしたい!本格的なオーディオだってアンプとスピーカーは分かれています!
ということでこれを機に内蔵アンプは卒業してパッシブ化してきます。
※アンプが入っていない普通のスピーカーのことをパッシブスピーカー、アンプ内蔵のことをアクティブスピーカーと呼びます
オーディオケーブルだけにして
まずハンダを取ってUSB電源ケーブルとオーディオケーブルを分けたら
通して結んで
オーディオケーブルとアンプがないスピーカーのケーブルを通して結びます。
ここで結び目からハンダ付け部までの距離が奥行きに対して余裕を残しておかないとケーブルを引っ張られたときにハンダが外れます。
はんだ付けして
ハンダ付けはグランド(青)を両方のスピーカーのマイナスへ、右(橙)を右スピーカーのプラスへ、左(白)を左スピーカーのプラス(ケーブルに白いマークのある方)へつなぎます。
左chのプラス接続部は絶縁テープをしっかりと撒いておきます。
組み立てれば完成
組み立てれば完成です。
ここでアンプ側のボリュームのあった場所の穴は忘れずにテープでふさいでおきます。
ふさがないでおくと、空気が漏れてしまいバスレフポートが機能しないため、スカスカの音になってしまいます。

爆音で鳴らす予定の方は、テープだけではなく樹脂で埋めると強度が上がりGOODです。
樹脂で埋める場合、グルーガン(ホットポンド)が手軽で良いでしょう。
ついでにケーブルの根元も空気漏れしないように樹脂で固めておきましょう。
ダイソーグルーガンで穴をふさぐ
ダイソーの200円グルーガンでボリュームを外した穴とケーブル根元の隙間を埋めてみました。
グルーガンを使う場合、ケーブルの根元に隙間ができやすいです。ケーブルをずらしながら爪楊枝を使って隙間なくうめていくとよいです。
ボリュームの穴は、内側からテープを貼っておくと、外側からグルーガンで埋めていく際に内部にグルーガンが垂れることを防げます。

パッシブ化したスピーカーを真空管シングル自作アンプで鳴らしてみると・・・!、もう内蔵アンプには戻れません。
エンクロージャーに手を入れてないにもかかわらず、中高域の響きが内蔵アンプとは全然違います。真空管のキラキラサウンドとダイソースピーカー、意外と相性が良いのかもしれません。また内蔵アンプ基板が無くなる分エンクロージャー体積が増える為か、パッシブ化すると気持ち低音が出てくるようになります。
ただし口径が小さいため仕方ないですが、とにかくこのユニットは能率が低すぎます。0.5W×2の真空管アンプでは、BGM的に静かに聴くなら大丈夫ですが、ちょっと音量を上るとアンプ側がクリッピングして歪んでしまします。

バスブーストしてガンガン鳴らすなら、数W以上のパワーに余裕のあるアンプを組み合わせる必要がありそうです。
例えば冒頭の動画のペットボトルダブルバスレフを、「トロイダル電源トランス+オールディスクリート自作アンプ+NF型バスブースト」で鳴らすとこのような感じになります。
このシステムが現在の私のメインオーディオシステムとなっています。
スピーカー300円、ペットボトルダブルバスレフ0円、アンプ?円(ジャンクかき集め)、トランス4,000円・・・。
数十万するようなピュアオーディオアンプで鳴らしたらどんな音を聴かせてくれるんだろう・・・(笑)

さらに音にこだわるならケーブル交換!

300円スピーカーに付属しているケーブルを流用して低コストでパッシブ化してきましたが、付属ケーブルはスピーカーを接続するには内部抵抗が大きすぎるという問題が発覚しました。

パッシブ化して2年程度使っていたある日アンプのバランスつまみを片方いっぱいまで回しても、絞った側のスピーカーが小さな音で鳴るということに気づきました。
しかも絞った側のスピーカーは逆位相で鳴っていました。

別のスピーカーに繋ぎ変えたところアンプのバランス機能に問題はなかったため、300円スピーカーのグランドの配線が怪しいと考え配線の抵抗を測定してみるとビンゴでした。
なんとイヤホンプラグ付き3芯ケーブルの内部抵抗は、手元の2017モデルで 約1.78Ω/m もありました。

ケーブル内部抵抗を測定した回路と、イヤホンプラグ付きケーブルでの測定風景を示します。
なお、低抵抗はテスターでは正確に測れないため、「4端子法」と呼ばれる低抵抗に適した測定方法を用いました。
4端子法によるケーブル内部抵抗の測定
未知抵抗の値は、未知抵抗に既知の電流を流しておいて未知抵抗の電圧降下を測れば、オームの法則を使って求めることができます。
4端子法は、名前の通り4本の線を使う方法で、電流を流すための端子(フォース線)と電圧を測定するための端子(センス線)を分けているという特徴があります。
テスターの抵抗レンジでは、センス線とフォース線が共通になっていて2本の線で測定します(2端子法)。つまりテストリードの内部抵抗や接触抵抗による電圧降下がセンス誤差として乗ってくることになり、低抵抗を測ろうとすると誤差が無視できなくなってきます。
一方4端子法であれば、電圧計の内部抵抗は非常に大きく電圧計にはほとんど電流が流れませんから、正確に未知抵抗の電圧降下を測定することができます。

流す既知電流は、大きすぎると未知抵抗が発熱し抵抗値が変化し、少なすぎると電圧降下が小さすぎて正確に測定できません。
ここでは切り良く1W相当の電流である0.5Aで測定しました。
(300円スピーカーは4Ωですから、
P = R*I^2 = 4 * 0.5^2 = 1W相当となります)

0.5A流した際の電圧降下は約0.8Vであり、抵抗値は
0.8V / 0.5A = 1.6Ω
と分かります。
イヤホンプラグ付きケーブルの長さは90cmありましたから、約1.78Ω/mになります。

イヤホンプラグ付きケーブルはもともとアンプの入力に使用されており、スピーカーレベルの信号を流すことを想定していないため、ローコストの細い線が使われていたと想像します。

同様にして左右スピーカー間を接続するケーブルの抵抗値も測ってみたところ、
2017モデルで0.3Ω/mでした。(80cmで0.24Ω)
スピーカー用はそれなりに低い抵抗値の線を使用しているようです。

抵抗値が分かったところで、アンプのバランスつまみをいっぱいまで回した際、鳴らないはずのスピーカーが逆位相で鳴った理由を考えてみます。
バランスを回した場合の回路
手元にあるスピーカーで実測したケーブルの内部抵抗を回路図に反映したものが上の図です。
アンプの出力インピーダンスが十分に低いとすると、バランスを絞ったchは出力0Vの電圧源(=GNDショート)となります。

例えばバランスをLchいっぱいに回したとすると、下の図のように右chのスピーカーとイヤホンプラグ付きケーブルのGND導体内部抵抗が並列に接続される形になります。
よって、合成抵抗の計算式でサクサク計算してくと、最終的にRchスピーカーには-13dBの電圧がかかるとわかります。
また、Rchスピーカーの+側端子がアンプのGND側にくる形になるため、逆位相で鳴るとわかります。

以上の検討結果は、もし左側だけに録音されている楽器があった場合に本来存在しない右側から聞こえてくる、正しくステレオ再生ができないことを意味しています。
とはいっても、普通に聴いている限りは全く気になったことはありませんでしたが・・・。
独立してGND配線する
根本的な原因は左右スピーカーで内部抵抗の大きなGND線を共有している点にあります。

300円スピーカーのために追加でケーブルを用意するのはもったいない気もしますが、少なくともイヤホンプラグ付きケーブルを内部抵抗が小さいものに交換する、予算が許せばコンポのスピーカーのように左右でGND線を共有せず、各スピーカーからアンプの端子まで独立して配線するのが好ましいと言えます。

ただし、ケーブルの内部抵抗を下げると音が変わるため(ダンピングファクターが関係)、オーディオ沼に落ちてしまわないよう注意が必要です(笑)

7、2017版のチップコンデンサ測定

前章でパッシブ化しましたが、基板を捨てる前に、気になっていた印字のないセラミックコンデンサを調べてみました。
今回使った測定方法と原理です。
C測定の原理
固定抵抗を用意して図の回路を組み、オシロスコープで波形を見ながら低周波発振器を調整して調べていきます。
C測定準備した基盤
測定時には各コンデンサを他の回路から切り離し、クリップコードやオシロのプローブで掴めるようにメッキ線をハンダ付けしました。
測定の様子
写真はR=1kΩでC4を測定した時の例です。

抵抗をシャント抵抗と見立てれば、コンデンサの電圧と電流を同時に見ていると言うこともでき、理論通りにきれいに位相が90度回転しているのが分かります。

周波数はオシロのカーソル機能を使って測定しました。
写真の例では(6)式にR=1000Ω、f=1930Hz代入して
C4 = 1/(3.14*2*1930*1000)
= 8.25*10^-8(F)
= 0.0825(μF)
E24系列(市販コンデンサのラインナップ)にある近い値に近似すると
C4には0.082μF (リード線付きコンデンサでは 823 と印字)が用いられていると分かります。

冒頭の回路図は同様な実験を全てのコンデンサについて、220Ω・680Ω・1kΩで3通り実験し測定したものです。
ボリューム
ついでにボリュームの抵抗値も調べてみようとハンダを取ってみたら、裏面に書いてありました。
B 503(緑・黒・橙)で「Bカーブの50kΩ」と分かります。

8、ブーミングで低音強化

改造とはあまり関係ありませんが、メインのスピーカー(Victor SP-UXZ11WMD-M 12cm3Way)よりも「ペットボトルダブルバスレフ + パッシブ化ダイソー300円USBミニスピーカー」を鳴らすことの方が多くなって3か月が経ち、セッティングが落ち着いたので紹介しようと思います。

<ご注意>
  • ブーミングは部屋の反射音を利用します。カーペット、カーテン、布団、衣類など、吸音する物が多くある部屋では思うような効果が得られない可能性があります。
  • 逆に物が少なく、コンクリートのように固い建材で作られた部屋だとサラウンドプロセッサで作ったようなライブな音になります。デッドな音が好きな方にはオススメできません。逆に、カーオーディオのリアスピーカーが必須な方、ショッピングセンターにちりばめられた天井埋め込みスピーカーのような「音像定位、何それ?」な音のシャワーを浴びるのが大好きな方にはおススメです。(完全に私の好みです(笑))
さて本題に戻ります。 ポイントは、部屋の隅に設置することで、部屋の音響特性で低音がボーボー響く「ブーミング」と呼ばれる現象を積極的に使うことです。
ブーミング
部屋の隅にスピーカーを設置すると、壁に囲まれるため大量の反射波が発生します。
その為、反射波や壁が共振して鳴る音同士が同位相で重なって低域がブーストして聴こえるようになることがあります。これが「ブーミング」です。
ピュア界では「不自然な低音」としてブーミングは対策すべき対象として嫌われています。

ところが、ダイソースピーカーの場合はピュアオーディオ用スピーカーのように低音が十分に出ないため、「不自然」になるよりも「低音が聴こえるようになる」効果の方が大きく、積極的にブーミングを使うことができます。

この違いは、車内のかなり奥の方(アクセルペダルの真横あたり)にドアスピーカーが取り付けられている車種で、カーオーディオのBASSをMAXにして爆音で鳴らしてみることで体験することができます。
例えばBASS FLATでもともと低音の出ていた17cmクラスの大口径スピーカーが設置された乗用車のカーオーディオでは、車内全体に不自然な低音がボーボー響くようになってまともな音になりません。ところが携帯ラジオみたいな音が鳴っていた10cmクラスのカーオーディオですと、「オーディオの設定をいじっただけで口径の割に低音が出るようになった」という印象に変わります。
設置例
私は6畳和室で写真のように設置しています。醤油のペットボトルで作ったダブルバスレフと、ディスプレイ台代わりにしているスーパーでもらった空き段ボール箱(2Lペットボトル用)の高さがぴったりで、サブディスプレイの両脇に違和感なく設置できています。
バスレフポートを壁側に向けることで、低音を部屋全体へ拡散させるようにセッティングしています。
ブーミングは聴く場所を移動することでブースト量が変わります。部屋の隅にペットボトルダブルバスレフを設置して部屋を歩き回ると、トーンコントロールを回すみたいにはっきりと低音の聴こえ方が変化するのが感じ取れます。
PC作業するときは適度な低音でBGM再生、動画を見るときにはスマホをBluetooth接続して自分が対角の隅へ移動し、低音ボーボーで楽しんでいます。対角の隅は、音が良いだけでなく、L字の壁に体をホールドされ、スマホで快適に動画が見られます。
リスニングポジションの探し方
ここで移動でブースト量が変わる仕組みを簡単に説明します。部屋を動き回ると波の到達経路が変わることで、耳に到着する時点で重なり合わさる波が変わり、聴こえる波(全て波が合成された波)の振幅や位相が変わってきます。

部屋の反響は無数の波が飛んきますが、簡単のために一つの反射波だけを考えます。
また簡単のため反射波の振幅は同じとします。
スピーカーから直接耳に届く直接波と、同位相の反射1、90度異なる反射波2、逆位相の反射波3をそれぞれ重ね合わせてみると・・・
同位相:ガッツリブースト、90度違い:ちょびっとブースト、逆位相:カット という感じになりました。
実際の部屋では反射波や共振音が複数重なるため、ガッツリブーストされる位置を見つけたけど箪笥の上だった・・・みたいなことも起こって不便なこともありますが、スピーカーの位置と、リスニングポジションをチューニング、時には模様替えもしながら楽しんでみるのも位置ゲーをやっているみたいで面白いです。

なお低音のみについて書きましたが、ペットボトルダブルバスレフはスピーカーが上を向いているため、部屋の隅に設置することで天井へ反射した中高域が部屋全体へ広がり、後ろからも音が聴こえるような感覚を楽しむことができます。
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参考文献・サイト

藤井 信生先生の各種アナログ電子回路の書籍
学生時代の教科書・参考書に指定されており図書館にも多く置いてあり、非常にお世話になりました。
電子回路理論がわかり易く学べてお勧めです。
https://www.amazon.co.jp/%E8%97%A4%E4%BA%95-%E4%BF%A1%E7%94%9F/e/B004KWP8YC/ref=dp_byline_cont_book_1#
オペアンプで始めるアナログ回路
オペアンプの基礎知識がまとめられています。
http://www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/contents/course/mechatronics/analog.html
低音が増強されるトーン・コントロール回路はどっち? | CQ出版社
NF型トーンコントロールの回路が載っています。
http://cc.cqpub.co.jp/system/contents/1248/
トーンコントロール回路
CR型トーンコントロール回路が載っています。「繋ぐだけバスブースト」はCR型から高域調整を取り払い、低域調整側だけを最大に固定して作った回路です。
NF型では帰還回路に組み込んで使う周波数特性を持たせるコアの回路はCR型と同じような形をしています。
http://www.mizunaga.jp/tone.html
ヘルムホルツ共鳴器 - Wikipedia
ペットボトルを使った「置くだけバスブースト」で使っているバスレフポートの学術的な原理です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%84%E5%85%B1%E9%B3%B4%E5%99%A8
E6系列 E12系列 E24系列 E48系列 E96系列 E192系列の一覧表と概略計算方法
抵抗・コンデンサのE系列ラインナップ一覧表です。
http://sim.okawa-denshi.jp/keiretu.htm
2端子法・4端子法|エヌエフ回路設計ブロック
抵抗測定方法について、ケーブルの内部抵抗測定で使用した4端子法・テスターで使用されている2端子法の両者を比較しながら解説されています。
http://www.nfcorp.co.jp/techinfo/dictionary/053.html