カーラジオ

0、はじめに

ワイドFM対応のカーラジオ
「39101-82M12」を改造してクルマに取り付けていましたが(スピーカー内蔵カーラジオの改造 Ver2)、FMの音が悪い。特に電波が弱い市街地で渋滞ではまると最悪。

ということでモデルチェンジした現行型「39101-82M20」をヤフオクにて購入してみました。
電源を投入しローカル局に合わせると、まず高域のクリアさに驚きます。無改造の「39101-82M12」とは比較にならないほどです。分解してみるとなんとD級アンプ!
FM感度も向上しており、室内でミノムシクリップをアンテナ端子に差し込むだけでガンガン受信します。
スピーカー内蔵カーラジオもいつの間にか進化しています。

<ご注意>
・このサイトを参考に改造を行ったことにより事故がおきましても、筆者は一切責任を取ることはできません。必ず自己責任で実施してください。

・出品されている物をみると、このラジオは同じ見た目でモデルチェンジを繰り返しているようです。(品番が変わっています)
本記事で紹介する写真・回路は、「39101-82M20」の物です。モデルチェンジにより基板上の部品番号等が変更になっている可能性がありますので、事故防止のため改造される際はお持ちのラジオをご自身でパターントレースして回路をご確認いただきますようお願いいたします。

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1、82M12と比較し内部調査

ネームプレート
旧モデルの82M12と現行モデルの82M20を比較してきます。
フロントパネルの見た目はほとんど変わりがありませんが、よく見ると操作パネルの印字から三角マークがなくなってすっきりしています。 どちらも国内ワイドFM対応で受信周波数帯域は76~95MHzとなっています。

※写真の82M12は改造してAUX入力端子を増設してあります。
基板の調査
操作部のイルミネーションが変更されています。
82M12では三角マークが光っているだけであり、暗闇では何のスイッチかわかりませんでしたが、82M20では操作部の文字が光るように改良されています。
照光式の文字はスピーカー一体でない普通のカーオーディオでは普通ですが、そもそもボタンが光らない機種もあった廉価カーラジオのなかで見れば進化と言えそうです。
基板の調査
基板の外観を見比べてみますと、リード部品の目立つ82M12に対して82M20は表面実装部品がメインの両面実装基板となっており、現代風なすっきりとした基板になっています。
また、82M12ではアナログアンプが使用されておりヒートシンク兼用のシャシーが基板に固定されていたものが、82M20ではヒートシンクレスの表面実装D級アンプとなりシャシーと基板はネジを外すだけで完全に分解できる構造になっています。

スピーカーの調査
スピーカーは、4Ω3.5W、布エッジの同じサイズの長丸型シングルコーンスピーカーが採用されています。
メーカーは82M12のJINGLI製から82M20ではLUXSHARE製へ変更されています。
どちらも中国の会社のようです。

jingli webサイト

LUXSHERE webサイト
いずれにせよこのサイズで低域は期待できないため、AUX端子を増設して満足のいく音質を得るためにはアンプ側を改造する必要がありそうです。
基板の調査
アンプ部です。RHOM製のOPアンプBA4558によるプリアンプ部と、同じくRHOM製のBTL出力D級アンプBD5423の2段構成となっています。
BA4558もBD5423も2回路入りのICですが、片チャンネル分のみ使用するという勿体ない使い方をしています。
ピッチが非常に細かくハンダ付けできるかという問題がありますが、余ったチャンネルを使って何か改造ができそうです。

プリアンプがOPアンプで構成されているのは改造の点からみると非常にありがたい構成です。
OPアンプ一つあれば、バスブーストやトーンコントロールなど、音質改善関係の改造はサクッとできてしまいます。
また82M20ではパワーアンプがBTLとなったことで82M12よりもパワーアップし、低域再生で不利となる出力カップリンゴコンデンサもなくなっているため、改造で強力なバスブーストを掛けられそうでワクワクします。

2、ダイハツ向け86120-B5111とピン配置

このラジオはダイハツ向けの物も存在します。
改造中に電源回路をショートさせて壊してしまい、せっかくなので買いなおす際にダイハツ向けを購入して比較してみました。
ダイハツ用
ダイハツ向けは上下非対称のワイドサイズとなっており、ダイハツ車にしか取り付けられないようです。
任意の車種にに取り付け可能なのはスズキ向けとなります。
スピーカーグリルの穴がダイハツ向けの方が大きくなっており若干クリアに聴こえますが、個人的にはかなり集中して聴き比べてやっとわかる差でした。
内部比較
内部の基板、スピーカーは両方共通となっています。

また、取り付けネジ穴も両方共通となっており、どちらにも取り付けられるよう市販オーディオ並みにネジ穴が設けられています。
内部比較
基板のコネクタ端子のプリントパターン及びネジ穴は、ダイハツ用のパターンとスズキ用のパターンの両方が用意されており、どちらのコネクタも取り付けられる構造になっています。
端子はどちらもバッテリー電源、アクセサリー電源、外部スピーカー出力端子が設けられています。
ピンアサインが異なるコネクタを共通化するため、パターン配置が工夫されていることが良く分かります。

コネクタ外形が異なる為、ケースはダイハツ用・スズキ用が用意されており、識別用の記号が印字されています。

3、ミキシングAUX追加

ミキシングAUX改造回路図
まずはスマホの音楽を聴けるようにするため、AUX回路を追加しないと始まりません。

以前制作した切り替え式AUX
スピーカー内蔵カーラジオの改造 Ver2 ~AUX(外部ライン入力)増設~
ですと、ラジオ聴取時にAUXの音声、つまりスマホナビの音声を聴くことができません。
そこで今回はラジオ聴取時もスマホナビの音声が聴けるよう、AUXとラジオをミキシングします。

改造のポイントは以下の3点です。
  1. 電源スイッチをバイパスし、ACC電源通電時は常に電源がONするように改造します。
  2. AUX信号とラジオ信号を抵抗経由でミキシングします。その際、電源スイッチを流用してラジオの信号をON/OFF可能にし、「AUXのみ」/「ラジオ+AUX」の切り替えを実現します。
  3. 聴き比べてみるとチューナー出力信号は高域が弱く感じたため、ラジオ側にのみハイブーストを追加します。(好みの問題のためハイブーストはなくてもOKです)
上記改造で、AUXを使用しない場合は改造前同様スイッチでラジオON/OFF、AUXを使用する場合は「AUXのみ」/「ラジオ+AUX」の切り替えとなります。
ミキシングAUX改造基板箇所
基板上の改造箇所です。
電源スイッチ、ラジオ信号のパターンをカットし回路を構成します。
私はシガーソケットへ差し込むタイプのBluetoothレシーバを使っているため、ラジオ前面にAUX端子を設けるとラジオ前面の配線がごちゃごちゃしてしまう問題がありました。そこで今回はケーブルを直接取り付けて本体裏側から接続できるようにしてみました。
充電器一体Bluetoothレシーバ
ラジオ裏面からAUX配線を持ってくることで、シガーソケットの裏側へ配線を隠すことができすっきりします。
なおBuletoothレシーバーはELECOMさんのLBT-ACR11BKという充電器一体型のものを使っています。

また、シガーソケットの配線を自作の電源コントローラで改造して、エンジンスタート時にBluetoothが切れないようにしています。

【宣伝】スマホナビ・ポータブルナビ派の方にお勧め!

ご紹介したミキシングAUX回路は、スマホナビが音声案内する際にラジオの音が被って聴こえづらいという問題がありました。
そこでダッキング制御を組み合わせ、道案内の入力を検出しラジオ音量が自動で一時的に下がる回路を製作してみました。

ラジオとスマホナビの音声が同時に聴ける!カーオーディオ用優先割込みAUX回路

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4、バスブーストを試す

プリアンプ周りの回路図
スマホを接続して音楽アプリを立ち上げ、再生ボタンをタップ。低音が物足らなさすぎて我慢できません。
そこでプリアンプ周りの回路をトレースしてみますと、教科書通りの正相(非反転)交流増幅回路となっていることが分かります。
この構成ならばバスブースト改造は朝飯前ですね!
プリアンプ周りの改造箇所
バスブースト


ここではR15を1kΩから100Ωへ置き換え、さらに220Ωと0.47μFからなるRC直列回路をR19と並列接続することで周波数特性を持たせています。
たまたま手元にあったジャンク基板を探しサイズが合うチップ抵抗は100ΩしかなかったことでR15を100Ωと決め、中高域の利得が元の利得(3倍)とほぼ同じ利得となるよう追加抵抗は220Ωと決めました。
ブースト量は約17dBとなりますが、音量を上げると盛大に歪んでしまい、ちょっと欲張りすぎたかなという印象です。
0.47μFはトライ&エラーで決めています。コンデンサ容量は大きい値にするほどカットオフ周波数が低い、つまり重低音寄りになります。

色々な定数を試してみましたが、スピーカーが非力すぎてどうにもならないのであきらめてお金をかける(サブウーハー購入)ことにします・・・。

5、サブウーハー追加がベスト

サブウーハー carrozzeria TH-WH500A
サブウーハーは、carrozzeria TH-WH500A を助手席足元に設置しています。 アンプ一体型の小形サブウーハーですが、

『21㎝ウーファーユニットに相当する両面駆動方式HVTユニット』 (メーカーの公式サイトより引用)

が使用されており、スペースを取ることなく迫力の低音が楽しめます。
カットオフとゲイン調整ができるリモコンが付属し手元で操作可能、さらにバッ直配線しなくてOKということでこれに決めました。
サブウーハー配線
配線にはウーハー付属のスピーカーレベル入力ケーブルを使用します。
ラジオ内部のラインレベルからバッファアンプを追加して配線する方法も考えられますが、回路構成が大変です。
そこで外部スピーカー出力端子を有効活用することにしました。
ラジオの外部スピーカー出力はモノラルであるため、スピーカーレベル入力ケーブルは左右チャンネル入力を並列にしています。

ウーハーの電源は、ラジオ裏から分岐で取っています。
ただしパワーコントロール端子はないため、ACC電源で代用します。

※消費電力の大きなウーハーはバッ直配線が指定されます。(オーディオ裏から電源を取るとヒューズが飛びます。)
試される場合は、ご購入されたウーハーの取扱説明書をご確認ください。
元のスピーカーのサイズを考えれば当然と言えば当然なのですが、サブウーハー導入の効果は絶大です。比較にならないほど音が良くなりました!

ウーハーがない場合、ポケットラジオで聴いているがごとく低音楽器の基本波成分が再生されず、まるでベース楽器が無いかのようなスカスカな音しか出てきません。一応ベースの旋律は聞こえてきますが、あくまで倍音成分が鳴っているだけで本来の音ではありません。
そこへウーハーを追加すると、「ボーンボーン」という低音楽器本来の音が聴こえるようになり、ちゃんとした「音楽」を楽しめるようになります。

実際に様々な曲でウーハー有無を聴き比べてみると、ラジオ内蔵のフルレンジだけでは音楽再生に必要な帯域がカバーされていないことが良く分かります。
つまりサブウーハーというよりはむしろメインウーハーとして動作し、ラジオ内蔵スピーカーと2way構成を構築するイメージといった方が正確かもしれません。